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リチウムイオン電池「電解液」世界シェア25%へ、三菱ケミカルGが描くシナリオ

三菱ケミカルグループは、高成長市場向けに差別化製品を展開する「機能商品」部門の売上高を2025年度に21年度比20・2%増の1兆3700億円へ引き上げる。基本方針はマーケット志向で戦略を考え、競争力の高い製品に絞り、世界中で成長させるというシンプルなもの。これを阻む日本中心かつ製品別販売重視の体制を変え、“スペシャリティマテリアルズ”中心の企業へ変革を目指す。(梶原洵子)

ジョンマーク・ギルソン社長は27日に開いた機能商品の戦略説明会で「機能商品部門は三菱ケミカルグループの進化の核心だ」と強調した。同部門にはリチウムイオン電池用材料や半導体関連などの成長分野の製品が多く、利益率も高い。全社に占める売上高比率は30%と各部門の中で最大で、伸ばせる余地が大きいとみる。

だが、製品の多さや国内依存度の高さが課題で、真価を発揮できていない。例えば、注力市場の一つの食品分野は売上高の大半が日本向けだ。今後、樹脂やフィルムなど製品種類を問わず各対象市場に最適なものを提供するマーケット志向の組織とすることで、これを是正する。また同部門で売上高1000億円分を撤退候補とし、選択と集中を行う。

強化対象に選んだ市場・製品にサプライズはない。半導体やエレクトロニクス、食品、電気自動車(EV)/モビリティーの市場で、基盤製品と成長、将来のステージに分け、伸びる地域で着実に伸ばす。半導体製造装置用精密洗浄サービスや炭素繊維複合材、食品添加剤などに注力する。

中国勢に市場を奪われていたリチウムイオン電池用電解液は、世界シェアを現在の13%から25年度に25%へ反転を目指す。同社は「車載電池でシェアが高い」と自負しており、EV市場拡大に追従して全体を引き上げることが主要シナリオ。技術優位性を生かしつつ、ライセンス供与や委託製造を活用して供給量を増やす。「必ずしも全て自社で生産する必要はない」(瀧本丈平執行役エグゼクティブバイスプレジデント)。

同社は脱汎用素材に向け炭素・石化事業の分離を計画し、機能商品部門の比率は一層高まる。成長市場を追える体制にした上で、次にどんな成長投資を行うかが注目される。


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日刊工業新聞 2022年9月29日

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