草ストローで環境問題解決、雇用創出につなげる若き起業家兄弟

新しい社会のカタチを作る Z世代の起業家たち #1 HAYAMI

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HAYAMIの大久保夏斗代表(左)と兄の迅太業務執行社員
1990年代後半以降に生まれた「Z世代」から、起業を選択する人が相次いでいる。彼らはビジネスを通じて資本主義の歪みや男女格差の問題といった壁に立ち向かい、会社やビジネスの存在意義に変化をもたらしている。背景には「社会課題の解決」を重視するZ世代の価値観がある。
次代の産業界を担う若者たちは今、新しい社会・経済のカタチを作ろうとしている。

HAYAMI(相模原市中央区、大久保夏斗代表)は完全生分解性の草ストローの輸入・販売を通じ、海洋プラスチックゴミ問題など環境問題の解決を目指す。原材料のレピロニアはベトナム・ホーチミン郊外で栽培され、現地の雇用創出にもつながっている。同社を立ち上げた大久保夏斗(21)代表と、兄の迅太(24)業務執行社員に、創業の背景や事業への思いを聞いた。(狐塚真子)

―創業の経緯を教えて下さい。
 (夏斗氏)「高校生の時、プラスチックが刺さって出血しているウミガメの動画を会員制交流サイト(SNS)でみた。それまでは環境問題について興味はなかったが、大きな衝撃を受けたことを覚えている。大学に入り、当時、ベトナムでバックパッカーをしていた兄から『草ストロー』の存在を聞いた」

―草ストローとは。
 (迅太氏)「ホーチミン郊外で栽培されるレピロニアという草の茎のみを材料に、現地で手作りしている。紙製のストローよりふやけにくく、水分を含むと耐久性が増す。生分解性プラスチックは特別な堆肥装置が必要になるが、草ストローは自然の温度で土に返る。農薬や殺虫剤、化学肥料を一切使わず、茎を自然乾燥させた後、熱殺菌、紫外線(UV)殺菌を施しているため安全性も高い」

HAYAMIが販売する草ストロー

(夏斗氏)「レピロニアは、かばんやじゅうたんなどで使われていたが、需要がなくなり、新たな用途として草ストロー作りが始まった。製造・販売を通じ、現地の雇用創出にもつながっている。東京農業大学の国際農業開発学科に所属しており、自分の学ぶ分野とも近いことから、草ストロープロジェクトを構想した」

原材料のレピロニアはベトナム・ホーチミン郊外で栽培されている

―起業へのハードルは感じていましたか。
 (迅太氏)「学生時代にベンチャー企業でインターンをしていたこともあり、ハードルは感じていなかった。周りを見ても20代の起業家が増えている印象だ。日本人は『誰かがやってくれる』という意識があるが、自分は何かアクションを起こしたかった。起業はあくまで環境問題の解決への一手段だ」

―Z世代のならではの強みをどう捉えていますか。
 (迅太氏)「デジタルネイティブであることだろう。草ストローの販売を行う電子商取引(EC)サイトは作成サービスを活用。自社ウェブサイトもプログラムを書かない『ノーコード』で開発し、コスト削減につなげた」

 (夏斗氏)「SNSを使った発信力も強みだ。実際にストローを導入した店舗の事例を写真・動画投稿サイト『インスタグラム』で紹介。若者にも目を引くよう、“映え”を狙った写真を投稿している」

(迅太氏)「コロナ禍で売り上げが減少している飲食店に対し、プラスチックストローよりも高価な草ストローの特徴だけを伝えても購入につながりにくい。自分たちがどういう経緯でこの活動をしているのか、バックグラウンドストーリーも含めて発信し、共感を得ることが重要だ。2020年5月から販売を始め、2月時点で約250店舗へ導入した」

―国連の持続可能な開発目標(SDGs)が浸透する中、環境問題に取り組む企業も増えてきました。
 (夏斗氏)「取り組み自体は良いことだが、ゴールに向けて具体的に何をしているかが重要だと思う」
 (迅太氏)「大事なのは社会へのインパクト。長期的な視点を持って取り組んでいくことが大事だと感じる。製造工程における脱炭素の可視化なども欠かせない。HAYAMIでも、草ストロー製造時の二酸化炭素(CO2)を可視化し、削減に取り組みたい」

―今後の取り組みの方針は。
 (迅太氏)「メキシコのスタートアップと協業し、サボテン由来のヴィーガンレザー(動物性素材を使用せず、動物皮革の構造を人工的に再現した皮革)を用いた商品の取り扱いを始めた。アニマルウェルフェア(動物福祉)などが海外で注目される中、日本で先駆けとして取り組む。草ストローの販売も継続する。現時点では、導入した店舗への見返りがない。導入したことで集客につながるような仕組み作りを進めたい」

日刊工業新聞2022年3月21日

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