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踊っているだけじゃない!今の時代はTikTokで新卒採用?

デジタルネイティブと言われるZ世代を中心に利用者数が拡大しているTikTok。かわいい女の子やイケメンが踊っているSNSという印象を持つ人も多いのではないだろうか。TikTokのメディアガイドによると、2019年5月と20年5月を比較すると、ダンスや自撮り動画などのジャンルは減少傾向にある。一方でフィットネスや料理、映画やドラマなどジャンルが増加している。

多様化するTikTokを活用して新卒採用に成功した企業がある。研磨を主軸とした金属加工を行う三陽工業(兵庫県明石市)だ。21年2月にTikTokアカウントを開設し、12月24日時点のフォロワー数は5万4千人にのぼる。動画には40-70代の男性社員が登場し、毎日更新する。

三陽工業はものづくりの技能承継をするために若い人材の確保に力を入れ、今年から新卒採用を開始した。デジタルネイティブの採用戦略としてTikTokの活用を決めた。22年の新卒採用においては、説明会参加者の7割がTikTokの投稿を見たことがあり、ファンだという声が寄せられたという。さらに内定者8人のうち3人は、TikTokを通しての応募だった。中高年社員の動画投稿が若者たちからの支持を得て、多くの新入社員獲得へと導いた。

新卒内定者のうち1名は、最初の接点がTikTokへのコメント投稿だった。TikTokの「おすすめ」動画に流れてきたおじさんたちの姿に衝撃を受け、「企業がTikTokに取り組んでいるのは珍しい。時代の流れに対応できる素晴らしい企業だ」と思い、求人について問合せたという。それに対し、人材育成部門の部長で動画にも登場する小杉義明氏が対応した。そのまま選考に入り、内定となった。ライブ配信が行われた際には、「来年春からお世話になります」と挨拶メッセージを投稿。すると、それを見た他の視聴者から、「入社おめでとう!」「新卒さん、がんばれー!」「入社したらTikTokにも出演してね」など、たくさんの応援メッセージが寄せられ、本人のモチベ―ションが高まったという。

中途採用において、特に20代の応募者が面接で「TikTokを見て、面白そうな会社だと感じた」という志望動機を口にするケースが、全国の営業所で頻繁に起こるようになった。2021年9月は、262名の面接者のうち約6割が「TikTokを見たことがある」と話した。

3人がダンスをする姿やゲームに挑戦するなど、一見「おふざけ」のようにも見える動画投稿に、中高年社員が毎日一生懸命取り組む。その姿に好感を抱いた若者がファンになり、フォロワー数が増加した。そこから「三陽工業で働くこと」に興味を持つ人が増えて求人応募につながるという連鎖が起こっている。三陽工業は、様々な展望を描きながら、おじさん&おじいちゃんトリオが、次はフォロワー10万人を目指す。そして、高齢化が進む日本の製造業において、未来の担い手となるZ世代の人材確保にさらに力を入れていく。

鈴木奏絵
鈴木奏絵 Suzuki Kanae デジタルメディア局コンテンツサービス部
料理動画やお買い物Vlogを見るのが好きで、TikTokを使っています。たった数十秒の中にギュッとコンテンツが詰め込まれていてかつ興味を惹く動画を制作するのはなかなかセンスが問われるのではと思います。ちょっとした隙間時間に見ているつもりがあっという間に1時間経っていた…なんて方は多いのでは? フォローしているクリエイター以外の動画も「おすすめ」から見ることができるので、新たな出会いがそこで生まれることも多いです。最近ではTikTokで流行った曲が注目を集めることもあり、広がりを見せているなと感じます。 就活や採用といえばまず「マイナビ」や「リクナビ」に登録、という風潮になっていますが、SNSの活用や企業の魅力を活かした発信も重要です。1年前就活をしていた私からすると、字面や全員が笑顔で写っている写真を見せられるよりも、自然な会話や日常が垣間見れる企業に魅力を感じます。何がしたいかはもちろん大切ですが、どのような環境で働きたいかも考えなければいけません。 企業と学生が出会う場所はますます広がっています。

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Z世代のニュースの見方
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1990年代後半から2000年代前半までに生まれた「Z世代」。すでにインターネットが普及していた時代に生まれた、デジタルネイティブと呼ばれる世代です。そんなZ世代にあたる新入社員の琴線に触れたニュースをZ世代の見方とともに紹介します。

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