ブランディングに課題を抱える企業はなぜ、デザインに救いを求めるのか

【特集】歩み寄るデザインとビジネス #5 デザイン×事業戦略

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事業の軸となるコンセプト設計、ブランディングに課題を抱える企業・組織が増え、解決の糸口をデザインに求める動きが強まっている。デザインファームも従来の外注先という域を超え、クライアントと一体となって課題に取り組む姿勢が求められている。このため、これをいち早く実践するデザインコンサルティングファームが注目されている。

「どうすれば自分たちの良さを生かせるかわからない」「新しい事業を立ち上げるが、コンセプトづくりから相談したい」――デザインファームと経営コンサルティングが一体となったデザインコンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」(東京都文京区)には、顧客から“ざっくりした”状態での相談が多く寄せられる。「事業開発から組織デザイン、企業ブランディングまで全体感を持って行えるファームは珍しい」と、同社戦略コンサルタントの濱脇賢一氏は話す。課題は大小さまざまだが、顧客と情報を分断せず、一体となって同じ組織のようにプロジェクトを進行していく点は共通している。

Z世代向けのフレグランスブランド開発

例えば、Z世代向けD2Cアパレルブランドを多数展開する「PATRA(パトラ)」のフレグランスブランド「wonde(ウォンド)」立ち上げでは、コーポレートブランディングから発展し、新規事業開発に携わった。国内のトレンドに閉じないブランドを展開するPATRAだが、フレグランスが盛り上がりを見せる韓国に比べ日本はあまり定着していない現状があった。「なじみのない体験を生活の中に取り入れるというのは課題であり、逆にチャンスでもあると捉えました」(ディレクターの田島一生氏)。

まずは関係者全員で会議に参加し、核となるコンセプト決めからスタート。「共感、寄り添うことに焦点を当て、そこから発展し『ゆらぎを肯定する』というブランドストーリーに決定しました。ここは時間をかけて練り上げました」(ライターの大久保潤也氏)。このコンセプトをもとに4種類のオードパルファムの香りを開発した。

 ビジュアル面のデザインに関しても、できる限り感覚や世界観をリアルタイムで共有することにこだわった。「デザイナーだけがアウトプットするような『お任せ』的な状況は避けたかった」(デザイナーの吉田直記氏)。「ゆらぎ」を、アンニュイな雰囲気、あいまいな色遣い、筆記の“ぐちゃっとした感じ”などで表現していった。
 「ふわっとしていたブランドコンセプトの根幹となる情報を整理し、抽象度の高いところから具体的なクリエイティブやコピーへと落とし混んで頂きました。私からは『こんな雰囲気が好き、こんな感じがいい』とかなり具体性の低いリクエストが多かったかな思うのですが、アウトプットにはしっかり意図が反映され、かつどんどん良いものにブラッシュアップされていき、ワクワクしながら楽しく完成まで進められたなと思っています」(PATRA取締役 COOの鈴木真彩)。

wondeのパッケージなどのプロダクト

しかし、完成間近に発生したコロナ禍で状況が一変する。このため、素早く事業の転換を決断し、ニーズが高まっていたハンドリフレッシャーへと大きく方向転換した。「販売戦略的にも、他社が類似商品を出していない段階で早く出すことが大きな意味を持っていた」と濱脇氏は振り返る。
 途中コロナ禍によるプロジェクトの停滞があったものの、コンセプト決定後はビジュアルデザイン、コピーライトなどそれぞれがパラレルに進行し、2020年9月に発売。8~9カ月ほどでプロジェクトを完了した。

根幹にあるデザイン

MIMIGURIの事業開発ではブランディングから販売戦略まで幅広く対応し、wondeのようなプロダクトの開発も2~3割を占める。しかし最近特に増加しているのが、組織改革や企業全体のブランディング、横断的な課題解決などより根本的な課題解決を求める案件だ。
 ビジネス組織の改革・立ち上げにデザインが入るとは、どういうことだろうか。濱脇氏は「経営戦略からの落とし込みや、企業としてのアイデンティティを明文化して浸透させる」ことだという。組織デザイン、事業デザイン、どちらにも共通するのが、文化やアイデンティティの醸成や再構築。それこそがMIMIGURIの提供する「深い意味でのデザイン」だと濱脇氏は強調する。

さらに近年、アイデンティティ構築やブランディングの内容においても大きな変化が見られる。自社、市場などの垣根がなくなり、社会、世界、地球規模で課題解決を求めるような、より抽象度が高く、SDGs(持続可能な開発目標)を意識するような傾向が強まっている。「スマートシティやカーボンニュートラル、完全にサステナブルな商品設計など、諸外国と比べ日本で先行事例があまり多くはないものに対し、相談が寄せられることが急増した」(濱脇氏)。「規模感の大きな事業を行う企業や組織が、それらと人を繋ぐためのブランディング設計に力を入れている」(田島氏)。

規模は違うにせよ、wondeの事例も商品の「ブランディング」領域の案件だ。デザインファームにブランディングのための並走を求める動きは加速するのは間違いない。しかし、ブランディングの方法論などはまだ海外発のものが多い。「海外のフレームワークを取り入れても運用できず困っているという例も見られる。当社では実際に運用していく人にとってなじみの良いブランディングを模索し続けている」(濱脇氏)。
 PATRAの鈴木氏はプロジェクトに際し、「アウトプットの提案の前にしっかりヒアリングやワークショップをしてもらったことで、最終的なクオリティが上がるだけでなく自分達の中で抽象的だったことへの理解度も上がり、理解度・納得感やその後の話し合いの角度も高くなったと感じでいます」と話す。顧客との垣根を超え、感覚や価値観を共有しながら一体となって課題解決に取り組んでいく地道な姿勢が、その組織ならではの文化から醸成されるブランディング構築の重要な一歩となる。

wonde開発時のミーティング

MIMIGURIは3月にデザインコンサルティングファームDONGURIとデザイン関連のワークショップや学術研究を行うMimicry Designが合併し、新たな一歩を踏み出した。「これまでの強みである、ブランディング・CIを中心としたコンサルティングサービスやクリエイティブの提供に加え、より広範囲なソリューションの提供が可能となりました。お客様の事業と組織の両面から本質的な価値や課題と向き合い、共に成長できればと考えております」(濱脇氏)。

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COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

ブランディングと一口に言っても、事業や企業によって背景はさまざまに異なります。非言語的だったり、抽象的な要素も多い。それに対しがっちりした方法論を当てはめてもうまく回っていかないことは予想されます。デザインを取り入れることで、アイデアを形にするそれをどう具体的な戦略に落とし込んでいくかが見えてきます。

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