デジタル親和性の高いシニアは生活満足度が高い?

急接近、シニアとオンライン #3 野村総合研究所

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シニアの趣味というと、園芸や書道など、どちらかというとアナログなものをイメージするかもしれない。しかし野村総研の調査(※1)では、2012年から6年間でそういった趣味の人は減り、パソコン、ビデオ・DVD鑑賞などが増加しつつある。シニアの中でも生活様式が少しずつ変化していることがわかる。
 スマートフォン所持率も急増しているが、まだ他の世代に比べると少なく、逆に言えば伸びしろがあるといえる。スマホではLINEやSkypeなどといったコミュニケーションツールを使用している傾向がある。

シニアでも増加するデジタルコミュニケーション

シニアの生活にとってコミュニケーションは重要だ。「週1回以上家族や親族の以外の方とコミュニケーションがとれている、社会的交流がある人の方が、生活満足度が高い傾向にあるという調査結果が出ている」(野村総合研究所コンサルティング事業本部マーケティングサイエンスコンサルティング部の林裕之氏)。

 そんな中、コロナ禍では対面コミュニケーションが激減。代わりにデジタルツールでのコミュニケーションは増加した(※2)。LINEやZoomなどに関しては、若年層を中心に「以前より増えた」と回答している。シニア層で最も増加したと回答があったのはLINEやショートメッセージで、女性の利用が多かった。
 今まで各種デジタルツールを利用していたシニア層に限ってみると、Zoomなどのテレビ電話の利用が最も増加したことがわかる。「先日、80代の方がオンライン飲み会を開いたという話を聞きました。団塊の世代の人たちは新しいもの好きの傾向が強く、日本の高度経済成長を作り上げたという自負がある人たち。デジタルツールも仲間づてに利用が進む可能性があります」(林氏)。

健康とデジタルの関係性

ただし、「デジタルツールでやり取りをする相手がいない」「そもそもツールを持っていない」と回答する人が他年代に比べ多いことも看過できない。デジタルツール利用者と非利用者の間で生活にも差が開き始めている。
 林氏は、デジタルと「健康度」(遠方への外出時に他人からの支援が必要かどうか)を軸にシニアを4象限に分割し、それぞれの傾向や行動を分析した。

 すると、「要支援シニア」は生活満足度が低くなる傾向にあるが、「要支援デジタルシニア」については、「健康アナログシニア」並みに生活満足度が高いことが明らかになった。健康度合いに関わらず、デジタルに触れていることが生活にもアクティブさをもたらしているようだ。
 消費行動を見ても、「デジタルシニア」は情報収集に積極的だ。ウェブでの情報収集だけでなく、店舗に行って実物を見たり、販売員に話を聞くといったリアルの場面も活用している。安さだけではなく、品質や利便性、安全性に配慮した商品を購入したいという意欲が高いようだ。
出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(2018年)
生活向上につながるような、のEC定期購入割引、AIスピーカー、タクシー配車サービスなど、移動を伴うデジタルサービスのニーズも高かった。

また、要支援シニアは趣味が消極的になりがちだが、「要支援デジタルシニア」はパソコンなどの趣味だけでなく、ボランティア活動にも積極的という傾向が見られた。
 「75歳くらいの団塊の世代は人口のボリュームが大きい。今後、社会的に見ても要支援の方は圧倒的に増えていく。そういった方々にとってデジタルのコミュニケーションはますます重要になってくる。コロナ禍をきっかけにデジタルを使い始めた方が多いというのは、今後プラスになるかもしれない」(林氏)。

利便性を重視

コロナ禍においてはコミュニケーション以外の対人サービスでもデジタル化が進んだ。ただし「デジタルツールを使うことを苦手とするシニアの方が使いやすいようなものを作る、という段階にはまだ追い付いていない」と林氏は話す。
 今後シニアをターゲットにしたオンラインサービスは増えていくと考えられるが、普及のためにはシニアの消費特性を押さえておくことが必要だ。
 「シニア層はモノを買う時、安さよりも利便性を重視する傾向にあります。自分たちはデジタル活用には不慣れで、ネット上の多くの情報を吟味して商品・サービスを選ぶことが難しい という認識を持っているため、シンプルにおすすめを提供してほしいというニーズがあります」(林氏)。利便性を重視する消費スタイルのシニアは年々増加しているという。

シニア向けのサービスではないが、類似のものとして、「airCloset」がある。プロのスタイリストが似合う服をセットで選んで定期的に届けてくれるサービスで、自分のクローゼット代わりにもなる。
 シニア向けではまだこういったサービスはないが、今後「要支援シニア」が増加すれば、個々人にレコメンドされたモノ・コトが定期的に提供されるようなサービスは必要になってくる。シニア自身が必要とするケースもあるが、周囲の人や家族がデジタルサービスを求める面も大きい。

そういったサービスが、デジタルに強くないシニアにも認知され、導入しやすいものになるには、シニアに親和性の高い従来型マスメディアとの連携も必要になってくるだろう。
例えば、フリマアプリの「メルカリ」がシニアの利用を促進するために折込チラシを配布した取り組みだ。
 商品購入時にテレビコマーシャル、新聞・雑誌などの広告、折込チラシを参考にすると回答した割合は全世代を見ると年々減少しているが、60代、70代では微増傾向にある。「従来型メディアを信頼をもって使い続けるという傾向が、シニアにはあると思われます」(林氏)。従来型メディアをうまく使いながら、デジタルツールやオンラインサービスを浸透させていくことが求められる。

(※1)NRI「生活者1万人アンケート調査」(1997年,2000年,2003年,2006年,2009年,2012年,2015年,2018年)
 (※2)NRI「新型コロナウイルス感染拡大による影響調査」(2020年5月)

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COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

利便性を重視するシニアの消費スタイルと、デジタルツールやオンラインを活用したレコメンドサービスは親和性が高いように思います。オンラインサービスとシニアの架け橋になるのが、従来型のマスメディアかもしれません。

キーワード
野村総研 シニア

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