【アイシン精機】シートやドアを自動制御、コンセプトカーが現実になる日

【連載・企業研究(6)アイシン精機】

 1月、アイシン精機は米ラスベガスで開かれたIT・家電見本市「CES」で、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を想定したコンセプトカーを披露した。人を検知してドアやシートが自動で動作し、感情に合わせて動きを最適制御する機能などを搭載。専務役員で情報・電子バーチャルカンパニー(VC)プレジデントの植中裕史は、来場者の好反応を見て「CASEの中でも“C”と“S”は我々がビジネスを引っ張らねば」との思いを強くしていた。

経営資源シフト


 ECU(電子制御ユニット)やセンサーなどを統括する同VCが最初に着手したのが、開発工程の効率化だ。ソフトウエア開発基盤の共通化や、進捗(しんちょく)管理ツールの一本化などを実施。ムダを削減し、電動化や自動運転に関連する領域の人員や投資を厚くした。

 CESで展示したコンセプトカーも成果の一環だ。植中は「まだ開発段階だが、経営資源のシフトが付加価値向上につながっている」と自負する。2021―22年には、より具体的な成果が世に出る見込みだ。生産面でもVC傘下のアイシンとアイシン・エィ・ダブリュで電子部品の共同調達を始めた。その比率はまだ小さいが、対象を拡大する方針だ。

 今やITや電子制御技術は、あらゆる製品やサービスのプラットフォーム(基盤)となっている。車でも電子部品の配置の仕方から、さまざまな機能を実現するための統合制御など、車両全体の電子的な基盤の構築を担う。そんな中、情報・電子VCが果たすべき大きな役割が、各VCの成果を融合した新ビジネスの創出だ。植中は「我々は横串を通す役割。例えばパワートレーンの開発案件を走行安全にも使えるのではないか、というのをうまく展開したい」と期待感をにじませる。

自動運転に応用 


 現在、最も力を注ぐのが、カーナビゲーションシステムで培った位置情報データ処理技術の応用展開だ。植中は「ハードウエアをより便利に使うための情報・電子技術と、地図から位置情報データに加工する技術は我々の強みだ」と力を込める。過去には位置情報や運転情報をパワートレーン制御に応用してエコ運転を先読み支援するシステムを、実車搭載する実績も生んだ。今後はこういった事例を、自動駐車などの領域にも応用する。

 VC制により、各社が抱えるテーマを集約して連携できる素地は整った。新たな製品やサービスを生み出せるか。情報・電子VCの真価が問われるのは、これからだ。(敬称略)

「VCで一つ上のレベルに」/植中裕史専務役員に聞く


 ―開発人材などの経営資源を電動化やコネクテッドなどに振り向けています。
 「ソフトウエア開発基盤の共通化など、開発工程の効率化を進めている。アイシン精機にはさまざまな事業があるが、情報・電子はそのどれにも関わる。これまでは各事業内で分散して活動していたが、アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュの情報・電子部隊が一つの塊となることで、全体の力をどう配分するかを考えられるようになった」

 ―生産面での効率化は進んでいますか。
 「検査工程や工場内物流など、最も良い方法や横展開の仕方などが目で見て分かる。これまでもやろうとすればできたが、定常的な活動として頻度も深さも全然レベルが違ってきたように思う。グローバル拠点については、まだ重複している所やカバーできていない所もある。お互い保管する形にして生産効率を上げたい」

 ―バーチャルカンパニー(VC)にしたことで逆に各事業との距離が離れてしまい、事業スピードに影響が出る懸念は。
 「例えば走行安全のシステムで必要な部品など、各事業の要求や依頼を受けて開発、生産するスキームはリアルの事業で行っていたのと変わらない。心配はない」

 ―VCになって効果を感じる場面は。
 「これまでは個々の会社の管理内で業務を進めていた。そのためグループ内で連携する案があっても、優先しないといけない仕事があったり時間がなかったりと、実際の業務を手がける担当レベルでは動けない面があった。今は実務担当を超えた上のレベルでもつながっているので、連携しやすくなった」

 ―CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代に向けた新たなデバイスやビジネスを生み出す役割が期待されます。
 「カーナビゲーションシステムで培った情報技術を、いろいろなシステムに生かしていく。地図から位置情報にデータを加工する部分は強みだ。我々がリードしながら(技術や関連するビジネスを)押さえたい。車体制御や走行安全、パワートレーン分野の付加価値向上にも貢献したい」

 ―アイシングループ外の連携についての考えは。
 「我々は磁気センサーやひずみセンサーなどを強みとしている。一方でITや我々が持っていない、新しいセンサーの領域は連携しないといけないと考えている。例えば電池や排ガス、故障予知に関わるセンサーや、生体センサーもやらねばならないだろう。技術の移り変わりも早いので、外部連携で事業スピードを加速したい」
(文=政年佐貴惠)
アイシン精機専務役員(情報・電子VCプレジデント)の植中裕史氏

連載・企業研究 アイシン精機


【01】CASE時代へ、東京事務所の“壁”を壊したアイシン精機の危機感(2019年4月1日配信)
【02】経営改革を断行する“連結の申し子”のビジョン(2019年4月2日配信)
【03】グループ企業の経営統合へ突き動かしたドイツの脅威(2019年4月3日配信)
【04】「絶対に負けられない」電動化対応ブレーキの戦い(2019年4月4日配信)
【05】競合相手と統合して得たモノ、得ていないモノ(2019年4月5日配信)
【06】シートやドアを自動制御、コンセプトカーが現実になる日(2019年4月6日配信)
【07】規模3年で倍に、成長性を確信する事業の正体(2019年4月7日配信)
【08】CASE対応へ社長が考える選択と集中の軸(2019年4月8日配信)

日刊工業新聞2019年3月26日記事に加筆

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
04月06日
この記事のファシリテーター

CASE時代のけん引役となるのが情報・電子VC。各VCに横串を通すような役割も求められるため、生産や開発の効率化だけに留まらない動き方が必要になりそうだ。また単に部品売りだけではない、次世代の自動車部品メーカーのビジネスモデル創出にも期待がかかる。センサーなどを手がける企業は多く、外部の知見を上手く取り入れられるかがカギとなりそうだ。

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