【アイシン精機】競合相手と統合して得たモノ、得られていないモノ

【連載・企業研究(5)アイシン精機】     

 アイシン精機のバーチャルカンパニー(VC)制に先駆けてグループ融合を始めたのが、ドアやシート部品を主に手がける車体VCだ。きっかけは2016年4月のシロキ工業(愛知県豊川市)との経営統合。東急電鉄の関連会社で、競合相手だったシロキとの統合作業に一定のめどをつけた今、車体VCはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(乗り物のサービス化)に戦略のかじを切る。

受注取れない


 「受注が取れない」―。アイシン専務役員で車体VCプレジデントの西川昌宏が異変を感じ始めたのは、10年ごろだ。中国など海外市場でシロキに負けるだけでなく、どちらも受注できないケースが出てきていた。「敵はシロキではない。オールジャパンで勝ち抜かなければ」。連携による競争力強化への思いを強くした。

 「生産も開発も今まで気づかなかった良い点が両社にいくつもあった」。西川は、この3年の成果をかみしめる。

 ドアフレームなど大物部品をシロキに集約し、アイシン辰栄(愛知県碧南市)も加えた3社の開発体制を一本化。さらに互いの長所を盛り込んだ新ラインの構築で、大幅に生産効率を上げつつある。

 現在、車体VCは部品を組み合わせたシステム製品を注力分野に据える。パワースライドドアやサンルーフなど人を検知して動作するような、自動運転車やシェアカーでの利用を見込む領域だ。

 新たな戦略も取り入れた。バックドアやスライドドア、内装など製品を六つのゾーンに分けて開発やシステム提案を行う「ゾーン戦略」だ。開発は車体VCに、アイシン高丘(同豊田市)、アイシン化工(同)、アイシン軽金属(富山県射水市)の素材系3社も加えて実施。西川は「素材から製品、システム開発までできる点が強み」と相乗効果の最大化を狙う。

次世代に先鞭


 ただ、生産面では初期投資負担の重さによって、想定ほどの効果が出ていない。このため、設備のさらなる集約や国内外47拠点の再編に着手し、システム製品やMaaS関連分野への経営資源投入を加速。現状10%程度の同分野の人員比率を20年には50%にする考えだ。設計や生産技術など各部署が個別に使っていた3次元(3D)データも共有し、開発効率は3割程度の向上を目指す。

 「新たな取り組みへも一体感は増している」(西川)。“グループ融合の先輩”として、次世代競争に先鞭(せんべん)をつける。(敬称略)

「6社連携で素材からシステムまで」/西川昌宏専務役員


 ―競争環境への危機感がシロキ工業との経営統合の引き金となりました。
 「シロキとは長年の競争相手だった。アイシンでは2010年頃から失注が出始めていた。我々かシロキのどちらかが取れていれば競争になっていたが、実はどちらも取れない状況が始まっていた。このままではいけない、パワースライドドアやサンルーフといった強い分野に注力すべきか、など考えていた所に経営統合の話が出た。うまくタイミングが合った」

 ―統合によって分かった互いの良さとは。
 「例えば設備ではシロキの方がシンプルな一方、我々はスピード面での良さがある。工程の作り方も大きく違った。コミュニケーションすることで、現場サイドではかなりの気づきがあった。同時に特に素材開発など、自分たちではできない領域がある。そのためにもグループ連携も重要だと認識していた。素材系3社と議論する場もこれまではなかったが、経営統合やバーチャルカンパニー(VC)をきっかけに集まれたのはよかった」

 ―拠点集約の進捗(しんちょく)は。
 「まだできていない。これから集約や生産ラインの統合に着手して効率化をさらに加速し、浮いた経営資源をMaaS(乗り物のサービス化)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連に充てたい」

 ―製品領域をゾーンに分類して開発を行うゾーン開発を取り入れました。
 「車体VC傘下の3社とグループの素材系企業3社で立ち上げた『開発委員会』が発端だ。6社の開発陣が取り組むべきテーマを議論する。この活動で手応えがあり、ゾーン開発に発展した。各社の良い部分を組み合わせながら素材開発からシステムにつなげられており、連携して進める意識も定着している。この3年間が良かったということだ」

 ―注力領域に据えるシステム製品とは。
 「センサーなども活用しながら単品ではなく、人の快適性や感情を検出するなど、複合的な製品だ。ゾーン開発を行うことで各社の知見を持ち寄り、相乗効果を生み出す」

 ―開発や生産以外の手応えは。
 「今、全体営業を始めている。設計はもちろん、営業も一体運営することで業務を効率化する。今後は事務部門についても検討を始める。成功事例が少しずつ出てきているので、現場サイドが『良い』と判断すれば広がる。競争力をつけるにはどうするか、方向性が一致してきている」
(文=政年 佐貴惠)
アイシン精機専務役員(車体VCプレジデント)の西川昌宏氏

連載・企業研究 アイシン精機


【01】CASE時代へ、東京事務所の“壁”を壊したアイシン精機の危機感(2019年4月1日配信)
【02】経営改革を断行する“連結の申し子”のビジョン(2019年4月2日配信)
【03】グループ企業の経営統合へ突き動かしたドイツの脅威(2019年4月3日配信)
【04】「絶対に負けられない」電動化対応ブレーキの戦い(2019年4月4日配信)
【05】競合相手と統合して得たモノ、得ていないモノ(2019年4月5日配信)
【06】シートやドアを自動制御、コンセプトカーが現実になる日(2019年4月6日配信)
【07】規模3年で倍に、成長性を確信する事業の正体(2019年4月7日配信)
【08】CASE対応へ社長が考える選択と集中の軸(2019年4月8日配信)

日刊工業新聞2019年3月25日記事に加筆

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
04月05日
この記事のファシリテーター

自動運転やシェアリングの時代では、車内空間や車体機能でこれまでには想像もつかなかったニーズが出てくる可能性がある。次世代ニーズをいち早くつかみ開発や製品につなげることが求められる。4月からはアイシン元副社長の岡部氏と、同元常務役員の小山氏がそれぞれシロキの社長、副社長に就任。アイシンの伊勢社長も非常勤取締役に就いた。拠点集約なども含めた両社の統合と相乗効果創出が加速しそうだ。

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