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次世代半導体製造に用いるEUV露光の要、阪大教授が30年前に開発した「CLBO結晶」とは?
半導体再興へ-大学の最先端研究#11
ロジック半導体の量産化に協力
大阪大学の森勇介教授(名古屋大学教授を兼務)は30年前に「CLBO結晶」を開発した。同結晶は紫外レーザーの波長変換素子として、今や次世代半導体の製造に用いる極端紫外線(EUV)露光の前工程と後工程に必須の素材だ。「産業の“川上”に位置する結晶」(森教授)となっている。
CLBOはセシウム、リチウム、ホウ素、酸素による化合物の結晶。これに通すと世界最高出力の紫外レーザーが発生する。半導体からレーザーの研究室に移り、両分野の技術を融合したことで運良く発見した。
国家プロジェクトで三菱電機と共同研究し、波長266ナノメートル(ナノは10億分の1)の紫外レーザーの高出力化に成功。結晶は実用化され、半導体マスク検査装置などに使われている。
また、米半導体製造装置大手KLAから熱烈なオファーを受けて協業したのを機に、2016年に創晶超光(大阪府交野市)を創業した。
「結晶を高品質化できるならいくらでも投じる」とのKLAの姿勢に「世界一を目指すには、失敗を恐れず先行投資することが重要」だと学んだ。不良品が出ないよう万全を期す日本的手法にも良い面はあるが、「イノベーションを生み出し、市場を独占できなければ半導体産業では生き残れない」と心得る。
IoT(モノのインターネット)技術の世界的な奪い合いにより、「半導体は永遠に進化する」と見る。現在、ラピダス(東京都千代田区)との連携を視野にロジック半導体の量産化に協力するほか、パワー半導体向けの高品質な窒化ガリウムの結晶でも産業に貢献している。(随時掲載)
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日刊工業新聞 2024年03月14日
特集・連載情報
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。