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半導体産業に沸く熊本、産学官連携の旗振り役が目指すモノ
半導体再興へー大学の最先端研究 #12
地元企業と実用へつなげる
熊本大学の青柳昌宏卓越教授は台湾積体電路製造(TSMC)が新工場を構え、半導体産業に沸く熊本で産学官連携の旗振り役を務める。「くまもと3D連携コンソーシアム」では地域の中小企業に対し、大学との共同研究により半導体産業への参入を促す。
産業技術総合研究所で超電導集積回路や3次元(3D)大規模集積回路(LSI)の積層実装技術の研究開発に長年携わり、数々の国家プロジェクトを主導。その手腕を買われ、2022年に熊本大へ移った。「TSMCは3D実装の実用化を目指しており、熊本大は千載一遇のチャンス」と青柳卓越教授は語る。
中間工程である3D実装を後工程側に寄せることで、製造コストは安くなる。「かつて後工程のビジネスが盛んだった熊本で中間工程を含めた後工程産業を復活させたい」とし、これまで培ってきたシリコン貫通ビア(TSV)や微細バンプを使った3D―LSI実装技術を企業とともに実用化へつなぐ。
一方、地元では半導体人材の不足が喫緊の課題だ。熊本大は4月、データサイエンスを基盤にした「情報融合学環」と、学部では珍しい「半導体デバイス工学課程」を設け、半導体の専門教育を強化する。28年度以降、現在比2倍となる毎年140人超の人材を半導体関連企業へ輩出することを目指す。
特に、地域の企業からニーズのある設計・製造・開発を担う修士課程修了者の育成に重きを置く。「これらの中核的な専門人材を70%程度にし、モノづくり人材となる学士は20%、残りの10%は博士課程修了者として新事業やベンチャーを立ち上げられる卓越した研究人材に育てる」つもりだ。(随時掲載)
日刊工業新聞 2024年03月28日
特集・連載情報
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。