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アカデミアの半導体研究を背負って立つ、東大教授が説く研究者の大切な姿勢
半導体再興へー大学の最先端研究 #8
日本発の最先端ロジック開発
東京大学の平本俊郎教授は日立製作所でバイポーラ相補型金属酸化膜半導体(BiCMOS)の開発に携わった。現在は応用物理学会長のほか、技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)のデバイス技術開発部門長を務めるなど、アカデミアの半導体研究を背負って立つ。
「トランジスタは20世紀最大の発明といえるが、これは科学者の単なる好奇心が生んだものではなく、真空管に代わる固体の増幅素子が必要という社会の要請に応える形で開発された」と語り、研究者にはそうした姿勢が大切だと説く。
CMOSは20ナノメートル台(ナノは10億分の1)世代までの平面型から現行の立体型FinFETと構造が変遷してきた。2ナノ世代以降はゲート・オール・アラウンド(GAA)ナノシート型となる。「技術世代を表す『技術ノード』はかつてはゲート長と一致していたが、現在はその数字ほどには微細化は進んでいない」と指摘する。
だが旺盛な需要に支えられ、CMOSは3次元(3D)積層へと移行し、新材料も導入されて集積密度は向上していく。各社がこぞって微細化を競うのは、世代が進むほどシステム性能が向上するとともに、量産によるコストメリットが強く働くからだ。
日本も半導体復権に向けて動き出した。平本教授はシリコン半導体の性能を極限まで追究してきたこれまでの経験を生かし、LSTCで日本発の新たな先端ロジックデバイスの開発を目指す。
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日刊工業新聞 2024年01月25日
特集・連載情報
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。