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「後工程から日本の半導体を盛り返したい」…横浜国立大准教授が3D集積技術に挑む

半導体再興へー大学の最先端研究 #10
「後工程から日本の半導体を盛り返したい」…横浜国立大准教授が3D集積技術に挑む

※イメージ

横浜国立大学の井上史大准教授は、関西大学在学中からベルギーの半導体研究機関imecで約10年間、半導体の後工程の研究開発を手がけた実績を持つ。「日本で半導体の人材育成に関わりたい」との思いで2021年に帰国。その後、日本政府が半導体支援に乗り出し、若手ながら中心メンバーとして前面に立つ多忙な日々を送る。

「日本の研究開発は閉鎖的だが、半導体は1社でやりきるのは困難だ」とし、オープンイノベーションが盛んなimecを手本に日本でコンソーシアムを作る構想に着手。22年に前身の組織を発足、23年4月に大阪公立大学と「3Dヘテロ集積(3DHI)アライアンス」を立ち上げた。参画企業は材料から装置、デバイスメーカーなど60社を超える。

目指すのは、チップレット集積に必要な「ハイブリッド接合」などの3次元(3D)集積技術の開発だ。今後、前工程で使っており日本が強みとする研磨技術などを後工程にも生かせると見込む。「後工程から日本の半導体を盛り返したい」と意欲を燃やす。

井上准教授

こうした経験を買われ、技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)では、前工程と後工程それぞれの開発に関わるほか、imecや仏研究機関Letiとの国際連携のリーダーに加え、人材育成の任務も背負うなど、“一人三役”をこなす予定だ。

「一時は日本の半導体の厳しさに危機感を覚えたが、状況は変わりつつある」。韓国サムスン電子が後工程の研究拠点を横浜に設けるなど地元が活気づく中、中立のアカデミアとしてそのハブとなる役割も期待される。

日刊工業新聞 2024年02月15日

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日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。

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