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家電量販店が量的拡大競争に終止符?

数量を追わず、利益重視に接客強化などの発言相次ぐ
家電量販店が量的拡大競争に終止符?

ノジマは社員による接客強化で粗利益率を改善

 業績発表の場で家電量販店業界から量的拡大を避け、質を目指すという発言が相次いでいる。最大手のヤマダ電機はシェアや売り上げよりも「質(利益を)追求する」(岡本潤取締役)と説明。エディオンも高付加価値製品の販売構成比が増加、「粗利益率の向上は高付加価値製品の成約が増えたため」(久保允誉社長)という。家電量販店に一体何が起きているのか―。

 ヤマダ電機は11月5日、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表したが、期間中売上高の伸び率は16年3月期に対し11%にとどまる。逆に営業利益は1000億円超えを目指す内容で伸び率は同67%。一時、2兆円超えを達成し、年間40店、50店と大量出店したヤマダらしくない計画だ。

 岡本取締役は「これからシェアは維持するが人の配置を変えることで接客を強化する」考えを明らかにした。その結果として高付加価値製品の販売が増え、粗利益率が改善するというストーリーだ。

 ノジマも15年3―9月期の粗利益率が25%程度と14年3月―9月期比で3ポイント程度上昇。その理由について野島廣司社長は「(ネット通販などで)安い商品を買っていた顧客が自身のニーズと合わず、商品を見極めて買う人たちが来店している」と話す。相談販売による接客効果で、高付加価値品の販売が伸びているという。

 エディオンも15年3月期は前期比1ポイント程度粗利益率が向上しているが、久保社長は「競合との価格競争が緩和し高付加価値品の販売が増加した」と説明する。

 大手が一斉に価格競争に走らず、高付加価値品の販売に動く背景は何か。ある調査機関の幹部によると、「これまで家電メーカーなどは量販店の仕入れ数量に対し手厚くリベートを付与していた。だが、最近は数量リベートを縮小させ付加価値製品などを拡販した量販店を厚遇する商慣習にシフトしている」というのだ。

 かつて一部大手量販店は数量リベートの獲得のために、自社販売量以上をメーカーから仕入れ、ネット通販業者などに横流ししていたケースも見られたといわれる。

 しかし、メーカーの商慣習の見直しで、家電量販店も数量獲得から付加価値製品への販売に力を入れており、横流し分が安売り店に回らなくなってきた可能性が高く、それがまた価格競争に歯止めをかける一因になっているという声もある。

 価格競争が沈静化、むしろテレビやエアコンというドル箱商材では安売りよりも付加価値製品にシフトした結果、大手各社の収益も好転した。家電量販店の利益重視の構図は長続きするか。業界の今後の成長を占うカギとなりそうだ。
ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
価格競争の激化で製造、販売で疲弊していた家電やデジタル製品の業界。量を追わず、メーカーの付加価値商品の販売を強化するという。質の追求する経営は脱デフレにも一役買う?

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