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20年ぶりに赤字も。重工大手の構造改革が正念場に

課題事業が足を引っ張る。来期以降の改善どこまで
20年ぶりに赤字も。重工大手の構造改革が正念場に

今年4月に社名から「造船」を外する三井造船(一昨年、進水した潜水艦救難艦「ちよだ」)

 造船・重機5社の2018年3月期連結業績予想が出そろい、三井造船を除く4社が営業増益となる。三菱重工業はフォークリフトなど中量産品の大幅増収に伴い利益を底上げ。IHIは民間航空機向けエンジン事業の採算改善などが奏功した。三井造船は建設工事から一時撤退したプラント事業の採算が悪化し、20期ぶりの営業赤字となった。増益の一部企業も、造船や産業・発電用プラントなどで苦戦する。構造改革などによるリスク払拭(ふっしょく)が、来期以降の業績を占う分水嶺となりそうだ。

 三菱重工業の中量産品事業を担うインダストリー&社会基盤セグメントの営業利益は、前期比59・8%増の800億円と大幅増益を見込む。世界的な需要減に直面するガスタービン事業や、国産小型ジェット旅客機「MRJ」の開発費増加を吸収した。

 去就が注目されていた宮永俊一社長は苦戦事業を踏まえ「会社全体で全力を尽くす戦闘状態」と表現。「この事態を乗り切るめどがついたら、できるだけ早く若返りを図りたい」と話す。

 IHIは増収営業増益を見通す。北米で遂行中の液化天然ガス(LNG)プラント建設で工事費用が増加するが、航空機エンジンの採算改善や為替の好転などが寄与する。エンジン事業を手がける航空・宇宙・防衛セグメントの営業利益は17年11月予想比40億円増の500億円を見込む。

 川崎重工業と住友重機械工業は、ロボット関連事業や建設機械関連事業などが利益の押し上げ要因となる。川重は民間航空機向け部品の一部で収益性が低下するが、ロボットや2輪車事業などが下支えする。住重は建機の回復や射出成形機事業の好調を維持する。

 三井造船はプラント建設工事の受注を凍結した影響などで、操業低下による固定費の回収不足や逸失利益が発生。営業損益は20億円の赤字(前期は83億円の黒字)に転落する。

 ただ、受注高は子会社の三井海洋開発がブラジル向け浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)2件を受注したことなどで、過去最高の1兆1600億円(前期比2・2倍)となる見込み。
                
日刊工業新聞2018年2月7日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
三菱重工の宮永さんは個人的に交代すると思っていたが…。続投してどこまで今の状況を収束させれるのだろうか…。

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