生成AIでコールセンターの通話要約を高度化、NTTテクノクロスが保険・金融向け投入
NTTテクノクロス(東京都港区、岡敦子社長)は、NTTが3月に投入予定の生成人工知能(AI)基盤「tsuzumi(ツヅミ)」を用いてコールセンターの通話要約機能を高度化するシステムを保険や金融などの特定業界向けに順次展開する。少ない追加学習量で業界や特定組織に特化した知識をAIに効率的に学ばせることが可能なツヅミの特性を生かし、業界特有の言語表現に対応した専門性の高い要約文を自動生成可能にする。
NTTテクノクロスのコールセンター向けAIソリューション「フォーサイト・ボイス・マイニング(FSVM)」に、生成AIの基盤となるNTT独自の大規模言語モデル(LLM)であるツヅミを活用する。
FSVMはNTTの研究所が独自開発した音声認識技術や感情分析技術、日本語解析技術を生かし、通話内容をリアルタイムにテキスト化する。要約文字数の指定や項目ごとの整理も可能。生成した要約文を顧客情報管理(CRM)システムに連携させて履歴や経緯の確認もできる。
これにツヅミを用いることで、例えば契約年数や事故歴に応じて決まる自動車保険の「等級」を理解した要約を可能にするなど、業界ごとの専門性に対応した要約文を自動生成する。
ツヅミは、事前学習済み言語モデルの外部に必要なサブモジュールを追加することで特定業界に対応したチューニングを柔軟に行える。データ量が軽量なため顧客企業のシステム環境上で運用でき、安全性も確保できる。
インタビュー/研究成果いち早く提供
2023年6月にNTTテクノクロス初の女性社長となった岡氏に今後の事業方針などを聞いた。(編集委員・水嶋真人)
―24年の重点施策は。
「NTTの中期経営計画に当社の事業計画をしっかりアライン(整列)することだ。当社はNTTの研究所が生み出す研究成果や世の中の先端技術・サービスを掛け合わせて顧客に価値を提供する使命を持つ。(NTTによる次世代通信基盤の構想)『IOWN(アイオン)』など研究所の成果をいち早く世の中に出し、NTTの中計で掲げる新たな価値創造、地球の持続可能性に貢献する」
―NTTが3月にツヅミを投入します。
「生成AIが普及し、AIの可能性が今まで以上に広がっている。ただ、使い方をきちんとしなければ電力消費の増大や情報漏えいを招きかねない。AIでコールセンター業務プロセスを高度化するなど、ツヅミを使ったソリューションをいち早く整え、新しい価値を顧客に提供する」
―NTTでは女性初の役員を経験しました。
「現在はNTTの執行役員15人中6人が女性となるなどダイバーシティー(多様性)が進んだ。だが、NTTテクノクロスでは取締役14人中女性は私しかいない。全てのNTTグループ会社でダイバーシティーが進んでいる状況にはなっていない。もっと多様化を加速させることで会社の成長につなげる」
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