東西契約数10年で半減、固定電話で増すNTTの負担
NTTグループの固定電話事業の負担が増している。NTT東日本・NTT西日本の固定電話契約数(加入電話とINSネットの合計)は6月末時点で1324万件と、10年間で半分ほどに落ち込み、NTT東西の業績拡大を阻害する要因となった。NTTの完全民営化に関する議論の一環としてNTT法の改正が検討される中、NTT東西の固定電話に義務付けられた全国一律(ユニバーサル)サービスの見直しも論点になりそうだ。(編集委員・水嶋真人)
「固定電話を将来どのようにすべきか、そろそろ議論を始めなければいけない時期に来ている」―。NTTの島田明社長は、NTT法で見直してほしい項目の一つに固定電話事業を挙げる。
NTTの2023年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、売上高と当期利益で過去最高を更新した一方、営業利益は前年同期比5・7%減の4746億円。NTTドコモの営業利益が企業のデジタル変革(DX)需要取り込みやコスト効率化で同3・2%増の2927億円となったものの、NTT東西が担う「地域通信事業」セグメントの営業利益は同19・5%減の1116億円に落ち込んだ。
地域通信事業では、財務や調達を担う大規模システムの更改費用や、電気代の増加が響いた。加えて固定電話契約減に伴う負担が増している。固定電話契約数は1997年11月の6322万件をピークに減少。スマートフォンの普及が契約減に拍車をかけており、24年3月末時点の契約数は1241万件になる見込みだ。島田NTT社長は「毎年150万ずつ減っている。ここ数年で1000万を切ることになる」とし、赤字が続く固定電話事業のさらなる負担増を懸念する。
設備運用や機器の保守を勘案すると、光回線を活用した「ひかり電話」やワイヤレス固定電話、モバイル通信といった代替手段を考える時期に来ており、「あまり先の話ではない」(島田社長)。24年1月には固定電話網(PSTN)からインターネット・プロトコル(IP)網への移行も控えている。
次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」を進めるNTTにとって、研究開発に関する開示義務や外国人が役員に就任できない条項の見直しも競争力強化に重要な要素となる。政府がNTTの発行済み株式の3分の1以上を保有することも定めた部分以外でも、NTT法の改正に向けた議論の行方に注目が集まる。