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稼ぎ頭「ドコモ」が「東西」の減益カバーできず…NTTが先行投資積極化、下期で巻き返しなるか

NTTが先行投資を積極化している。2023年4―9月期連結決算(国際会計基準)の営業利益は前年同期比4・6%減の9509億円だった。稼ぎ頭であるNTTドコモの営業利益が法人・スマートライフ事業の成長に向けた先行費用で微増にとどまり、NTT東日本やNTT西日本の減益をカバーできなかった。ただ、NTT東西も業務効率化に向けたシステム更改を4月に実施しており、23年度下期での巻き返しを見込む。(編集委員・水嶋真人)

NTTと主要4社

「下期はコスト改善効果や資産整理などを通じ、通期で前期並みの水準に持っていく」―。NTTの島田明社長は上期に営業利益が2ケタ減となったNTT東西などの「地域通信事業」について、こう説明する。

NTT東西の固定電話契約数(加入電話とINSネットの合計)は9月末時点で前年同月末比約114万件減の1299万件。光回線サービス「フレッツ光」(他社に光回線を卸す「コラボ光」を含む)の契約数もコロナ禍による在宅勤務需要の反動で同約14万件増の2363万件と伸び悩んだ。

従来は固定電話の契約減を光回線契約の純増でカバーする収益構造だったが、「厳しい状態になってきたため、コスト削減などでカバーする」(島田社長)。NTT東西などは財務、調達関係のシステムを4月に刷新。業務効率化のための費用が上期にかさんだ。使わなくなった通信設備などの古い建物を除却して再開発するといった不要資産の売却費用も利益のマイナス要因となったが、下期はこれらの先行費用の効果が出てくる見込みだ。

ドコモは金融など非通信事業の拡大を急ぐ(スマートフォン決済「d払い」のイメージ)

稼ぎ頭のNTTドコモも中小企業向けの提案支援体制強化といった先行費用が響き、23年4―9月期の法人事業の営業利益が前年同期比2・8%減の1421億円となった。ただ「(案件獲得から受注までの)パイプラインは順調に積み上がっている。(ITのシステムや基盤、インフラを一括提供する)統合ソリューションの伸びがさらに加速する」(ドコモの井伊基之社長)と、下期の着実な営業増益を期待する。

金融や電力といった非通信のスマートライフ事業では、企業向けマーケティング支援で強みを持つインテージホールディングス(HD)を471億円で買収した。約486億円を投じてマネックス証券を子会社化することも決めた。新規領域強化に向けた投資が営業利益の圧迫要因となったが、「こうした要因は上期で落ち着く。下期は増益(の幅)を拡大できる」(同)との見通しを示した。

日刊工業新聞 2023年11月14日

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