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行きは紙、帰りは飲料…「ラウンド輸送」で変わる紙物流

迫る変革 製紙物流(中)
行きは紙、帰りは飲料…「ラウンド輸送」で変わる紙物流

大王製紙はサントリーHDと関東圏-関西圏の長距離輸送を効率化している(上が大王の紙製品、下がサントリーの飲料製品の混載イメージ)

「想定通りいかない点もあったが、現場の作業レベルは確実に向上している」。大王製紙の田上一義執行役員グローバルロジスティクス本部長は、サントリーホールディングスと組むトラック・鉄道の長距離輸送についてこう語る。

数年前からの車両融通を経て、2022年夏には関東圏―関西圏で貨物の混載と鉄道コンテナの共有を開始。トラックは渋滞で想定よりも時間を要し、飲料、紙という異なる品の混載で積み込みには細心の注意を払うなど気苦労も少なくない。

それでも増便で走行するトラック数を減らすなど効果を挙げ、両社は23年8月から高松市―東京都品川区間の鉄道輸送も始めた。

貨物を終着駅で降ろし、帰り便は別のものを積んで戻る「ラウンド輸送」で、愛媛県から関東に紙製品、神奈川県から香川県には飲料を輸送。全てトラック輸送だった従来と比べトラック運転時間は85・6%減、二酸化炭素(CO2)排出量は63%減を目指す。

そんな大王製紙と同業の日本製紙が連携し23年8月、千葉市の千葉中央港と大阪府の堺泉北港を結ぶ海上共同輸送を始めた。大王が愛媛県の工場からの出荷で東日本向けに使う貨物専用フェリー(RORO船)の帰り便に、日本製紙が福島県の工場から出す西日本向け情報用紙を積む。往路のみ利用で空だった復路を“満杯”にすべく取り組む。

紙会社同士の定期ラウンド輸送はこれが初めて。家庭紙で特許係争中の間柄ゆえ、業界内で「呉越同舟」との声も聞かれるが、「コスト低減に向け、目標額を決めて輸送効率を高めたい」と日本製紙の川里裕一営業企画本部物流部長は語る。これに先だって同社は、DOWAエコシステム(東京都千代田区)と秋田県―首都圏間での段ボール原紙などのラウンド輸送を始めた。

トラックから船、鉄道へのモーダルシフトは活発化している。王子ホールディングスは、苫小牧―東京間のRORO船で青森県八戸港への寄港回数を増やしている。港の荷役を約4時間から3時間半程度に縮めた。八戸市に工場を持つ三菱製紙は船の利用を増やし、トラック利用率を約2割まで減らす。

北越コーポレーションは、三重県の工場から関東への製品輸送に船舶の活用を検討している。千葉県、茨城県の各工場からの出荷では鉄道利用を始めた。

船、鉄道はトラックよりコストがかかるが、長距離、大ロット輸送に最適。政府は低環境負荷の点からも利用を奨励する。とはいえ、運用にはトラック輸送以上に高い計画性や時間的余裕が欠かせない。

日刊工業新聞 2023年09月28日

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