日本製紙・大王製紙が海上共同輸送、定期的輸送提携は初
日本製紙と大王製紙は、千葉市の千葉中央港と大阪府の堺泉北港を結ぶ海上共同輸送を2日に始めた。大王製紙が三島工場(愛媛県四国中央市)から首都圏・東北向けの製品輸送に使う貨物専用フェリー(RORO船)の帰り便に、日本製紙勿来工場(福島県いわき市)の情報用紙を千葉中央港から積み込み、関西圏に運ぶ。製紙会社が連携する定期的ラウンド輸送は初めて。物流2024年問題や二酸化炭素(CO2)排出量削減を背景に今後、さらに加速しそうだ。
ラウンド輸送は貨物を終着地で降ろし、帰り便は違う貨物を運んで戻ることを指す。海上共同輸送は、国土交通省の総合効率化計画の認定、モーダルシフト推進事業の交付を受けて行う。
大王海運(愛媛県四国中央市)が三島川之江港(同)―堺泉北港―千葉中央港で運行するRORO船を活用。行きのみの利用で、帰りは空だった大王製紙の“枠”を日本製紙が使う。
日本製紙は感熱紙など情報用紙を勿来工場から千葉中央港までトラックで運ぶ。船に積み替え堺泉北港まで海上輸送し、その後は兵庫県尼崎市の園田倉庫にトラックで運ぶ。
同社は当面週に2便で計36トンの製品を輸送する。船の活用で従来のトラック長距離輸送よりCO2排出量を年46・7%、トラックドライバーの走行時間を78・8%、それぞれ削減する。
大王製紙は三島工場で生産した紙・板紙製品を、三島川之江港から首都圏、東北地区にで1回当たり1000トン程度輸送している。
「厳しくなる物流環境を打開するため、両社でできることはないか」。大王製紙と日本製紙が共同輸送・保管を検討し始めたのは約1年前のこと。双方の物流子会社を含め、目標数字を設定するなどあくまでビジネスベースでの取り組みだ。
大王製紙はサントリーグループと、日本製紙はDOWAエコシステム(東京都千代田区)と共同輸送を進めるなど物流改善に熱心。大王製紙、日本製紙は元々印刷・情報用紙に強いが、長巻きトイレットペーパーの特許をめぐり係争中の間柄でもある。
「商売と物流は別」というスタンスだが、業界では「今回の『呉越同舟』は、将来的にモノが運べなくなる深刻さを物語っている」との声も聞かれる。
洋紙はデジタル化で需要が先細り傾向にある上、消費地と工場が離れているケースが少なくない。地方ほどトラック、ドライバーの不足が顕著との事情もある。
両社は今後、共同輸送の対象品目・ルートを広げることを検討。一方でそれぞれ異業種企業との関係も模索する。「食品や日用品メーカーなどで組織する共同物流の仕組みが理想」(製紙会社)ともされる。ただ同じ悩みを持つ業界内連携の余地もあり、紙代理店を巻き込んだ輸送効率向上などが注目される。
トラックドライバー不足や残業時間上限規制など「物流24年問題」への対応が求められ、製紙各社はトラックに代わる船舶や鉄道の利用を広げつつある。
船や鉄道はコストがかかり、長距離輸送やロットの大きい輸送に適している。トラックより余裕を持った受注、出荷が必要となる。
500キロメートル以上のルートにおける船、鉄道の輸送量比率(モーダルシフト率)は日本製紙で76%、三菱製紙は74%。日本製紙は今回、大王製紙とトラックの荷台を載せるRORO船を使うが「トラックをそのまま運べるフェリーの活用も増やしたい」(日本製紙物流部)という。
王子ホールディングスは、苫小牧―東京間のRORO船で輸送効率の向上を図る。7月から青森県の八戸港への寄港回数を増やした。港の荷役を約4時間から3時間半程度に短縮し、可能にした。
船の利用がトラック、鉄道より多い三菱製紙は、紙・板紙工場を青森県八戸市に持つ。「環境負荷軽減の観点からも船の比率を増やしたい」として、同社は約26%のトラック利用率を、将来20%程度まで減らす考えだ。
北越コーポレーションも船舶利用を増やす方針だ。三重県紀宝町の工場から関東方面への製品輸送に活用を検討する。一方、23年度から千葉県市川市、茨城県ひたちなか市の両工場からの出荷で鉄道コンテナを利用するモーダルシフトを始めた。24年度からは新潟市の工場から関西方面への鉄道コンテナを増量することも検討中だ。