マツダがファン層拡大へ、イベント充実で掴む手応え
レース通じて交流、「絆」強める
マツダがモータースポーツをきっかけとしたファン層拡大に注力している。日本では敷居が高いと思われがちな同スポーツも、米国では草野球ならぬ“草レース”のように一般的に楽しむ文化があり、マツダは日本にも根付かせたい考え。毛籠勝弘社長は、車の楽しさを体感できるイベントなどを事業化する意向を公表済みで、17日に開いた自社ファンイベントでは自らレースに参戦し盛り上げた。イベントコンテンツを充実させ幅広い層のファンを獲得する狙いがある。(大原佑美子)
「マツダは走る喜びで移動体験の感動を量産する、車好きの会社。ブランド体験を大切に交流を続け、絆を強めたい」―。富士スピードウェイ(FSW、静岡県小山町)で5年ぶりに開いた「マツダファンフェスタ2023」で毛籠社長はファンに向けてあいさつした。
6月に就任した毛籠社長は、グローバルマーケティングで手腕を発揮してきた。北米で『ブランド価値経営』を徹底し、若年層から世帯年収の高い優良顧客層まで幅広い層の支持を獲得。スポーツのごとくレースを楽しむ米国のように、日本でもレースをきっかけに家族全員にマツダに触れてもらう機会を増やすことで、エントリーモデルからハイエンドモデルまでライフスタイルに合わせて車を乗り継いでもらいたいとの思いがある。
今回のイベント参加者は18年実績比で約2・8倍の1万4000人だった。5年ぶりの開催に加え、コンテンツの充実も参加者数の底上げにつながった。目玉の一つで、決められた燃料で3時間低燃費かつ安全に走りきる耐久レース「ECOマツ耐」には、毛籠社長率いる役員チームも『ロードスター』のモータースポーツベース車で参戦し完走。「クリーンなレースで楽しく走れた。子ども世代までモータースポーツの楽しさが伝わればうれしい」(毛籠社長)とした。
トヨタ自動車やSUBARU(スバル)と進める、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)燃料の実用化に向けた取り組みを語るトークショーも開催。トヨタの高橋智也GAZOO(ガズー)レーシングカンパニープレジデントは「同じ燃料で3社のエンジンでのデータが測れ、共有している。従来あり得なかったこと」と協調の意義を語った。マツダの前田育男エグゼクティブフェローは「日本メーカー合同でスポーツカーを作ってみたい。日本にしかできないモノづくりで、日本の自動車産業は優秀だと証明したい」とブランドの垣根を越えて取り組むことの大切さを訴えた。
車とは関係ない化粧品ブランド「シュウウエムラ」もメーキャップ体験ブースを出展。マツダの塗装技術「匠塗」に着想を得て開発したアイシャドーを用いたメーク術のデモンストレーションは、カップルで訪れた参加者らに人気で、予定より席を増やして対応した。プログラマーやエンジニア体験ができる子ども向けコンテンツも充実。小島岳二取締役専務執行役員兼最高戦略責任者(CSO)は「レースになじみのある世代は年配者が多いが、今回のイベントは若い人が増えた」と手応えを語った。
コロナ禍を経て消費者の生活や価値観が大きく変わった今、顧客との接点をどう生かし、ファン層を拡大できるか。毛籠新体制に期待がかかる。
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