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海運の脱炭素、ヨーロッパはメタノール“推し”

海運の脱炭素、ヨーロッパはメタノール“推し”

APモラー・マースク

日本、選択肢広く準備

海運業界の脱炭素燃料は、アンモニアのほか次世代エネルギーである水素やバイオディーゼル、メタノールなども候補だ。

近年、デンマーク海運大手のAPモラー・マースクは、二酸化炭素(CO2)を排出しない方法で製造されたグリーンメタノールにかなり積極的に取り組んでいる。メタノール燃料船の発注や既存船の改造だけでなく、生産計画へも参加する。欧州勢はメタノールを脱炭素燃料の主役に据えたい考えのようだ。

メタノール燃焼エンジンは技術的に確立されていることが、推進の理由として大きい。国内勢も複数隻のメタノール燃料船を保有しており「メタノールが大量かつ安価に市場へ出てくるのかを見極める」(日本郵船グリーンビジネスグループ燃料炭・アンモニアグループの六呂田高広グループ長代理)。

合成メタンも課題はあるが、液化天然ガス(LNG)燃料船の技術を活用できるため取り組みやすい。課題であるメタンの漏えいに対し、日立造船やヤンマーのグループ会社は漏えいを削減するメタン酸化触媒などの技術を開発中で、商船三井はLNG燃料船での実船実証に協力する。

バイオディーゼルは既存のディーゼルエンジンの仕様を変えずに使用でき、日本郵船や商船三井、川崎汽船は複数回の試験運航に成功している。短期・中期の温室効果ガス(GHG)排出削減対策としてかなり有望だ。ただし、持続可能な航空燃料(SAF)などと原料の種類が同じため、原料の取り合いとなる可能性がある。

水素では、国のプロジェクトを通じエンジンの開発が進む。商船三井はジャパンエンジンコーポレーションが世界に先駆けて開発する水素エンジンを船舶に搭載し、実証運航に向け協力することで合意した。取り扱いの難しい水素だが、世界各地で再生可能エネルギーを使い水の電気分解で製造する計画があり、生産量への期待は十分にある。川崎汽船は大規模海上輸送の検討に参加しており「輸送需要の可能性を信じて取り組む」(池田真吾執行役員)。

商船三井は水素に関して、海上で水素を作るという「ウインドハンター」プロジェクトも進めている。風が強い時は帆で受けた風の力で船を動かし、水中タービンで発電した電気で水電解して水素を作る。風が弱い時は水素を消費して燃料電池で発電し、プロペラを動かして推進力を補う。陸上への水素供給も検討する。船が水素工場となるのだ。「2030年までに大型船の開発・建造を目指す」(技術革新本部の杉本義彦技術部長)。多彩な取り組みが進んでいる。

日刊工業新聞 2023年09月14日

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海運 脱炭素燃料戦略
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