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アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」近く承認…治療に期待も高額薬価に課題

厚生労働省の専門部会はエーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の薬事承認を了承した。厚労相が近く正式承認する。病状の進行抑制が確認された初めての薬となり、認知症治療のあり方を大きく変える可能性を秘める。年内にも実用化される見通しだ。ただ、高額な薬価や検査体制の整備など課題も多い。(幕井梅芳)

アルツハイマー病は長らく治療が難しい病気とされてきた。脳内に「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質が蓄積することで神経細胞が傷つき、認知機能が低下する。

レカネマブはアミロイドβを取り除くことで、病状の進行を遅らせる効果があるとされる。臨床試験(治験)では18カ月投与すると、偽薬を使った患者と比べて、初期段階の患者の病状進行が27%抑制された。製薬企業などの研究グループによると、早期の患者が重い症状のステージに進行するのを平均で2―3年遅らせるとの推定もある。一方、投与者の12・6%に脳の腫れ、17・3%に微少出血が認められるなど副作用が報告された。

壊れてしまった神経細胞を再生することはできないため、投与は認知症を発症する前の「軽度認知障害」の段階や発症後の早い段階で行うことが必要だ。

レカネマブが認知症治療に貢献することが見込まれ、岸田文雄首相も「日本初、世界初のイノベーションが国境を越えて、認知症の方とそのご家族に希望の光をもたらすことは大変嬉しい」と期待する。

ただ課題もある。まず投与前に脳内に溜まったアミロイドβの蓄積状況を測るため、がん診断などに使われるPET(陽電子放射断層撮影)検査の体制作りが必要だ。厚労省によると、国内では400施設にPETが500台導入されているが、検査スタッフや緊急時の対応は十分でない。血液検査で対象者を絞り込んでからPETを行うなど、検査や診断の体制を整えることが急務だ。

また、PET検査は公的保険の対象外だ。1回20万―30万円程度かかり、現時点では全額自己負担のため、レカネマブを保険診療に組み込む必要がある。

レカネマブが高額なのも課題だ。エーザイは米国での価格を年間2万6500ドル(約385万円)としている。日本は高額医療費制度により一定程度抑えられるものの、100万円単位になる見込みだ。

厚労省は23日から中央社会保険医療協議会(中医協)を開き、レカネマブの薬価を決める議論を始める。認知症は患者が多く、医療保険財政を圧迫しかねない一方、介護負担の軽減になる。厚労省は難しいかじ取りを迫られそうだ。

日刊工業新聞 2023年08月23日

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