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飼育はOK、でも逃がすと違法に!? アメリカザリガニとアカミミガメ

自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ #5

工場でアメリカザリガニやアカミミガメを見つけたら、注意が必要だ。不用意に飼育してしまうと後悔するかもしれない。
 この2種は学校や家で飼育する身近な生物。しかし日本の生態系に深刻なダメージを与える外来種であり、政府は2023年6月から販売や野外へ逃がすことを禁止する。

アメリカザリガニは体が赤く、ハサミを持ち上げて威嚇ポーズをとる(図)。ミドリガメとも呼ばれるアカミミガメ。幼い時は3cmほどだが、成長すると30cm近くになる。どちらもアメリカが本来の生息地だが、20世紀半ばに日本に持ち込まれた。

図 威嚇するアメリカザリガニ

ジュンサイを育てる、ため池が激減した。ジュンサイは芽や茎が食用となるため、ため池で栽培する業者が多い。そこにアメリカザリガニが増殖し、ジュンサイの育つ環境が乱されてしまったのだ。他にも各地でトンボ類やゲンゴロウ類の減少が確認されている。
 アカミミガメは日本のカメと日光浴の場所を巡って争い、水生植物や魚、両生類などに影響を与えている。また、レンコンやイネなど農作物被害も起きている。

2種は、2023年6月1日から「条件付特定外来生物」に指定され、輸入や販売、購入、景品などでの大量配布、これらを目的とした飼育が原則禁止となる。一般の人や学校での飼育は認めるが、野外に逃がすと違法となる。容器から逃げ出しても違法だ。
 環境省は野外で捕まえても安易に持ち帰らないでほしいと呼びかけている。今後、工場の緑地整備で見つかるかもしれない。対応が不明な場合、同省の相談ダイヤル(0570・013・110)まで。

(「自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ」p.151-152より抜粋)

<書籍紹介>
書名:自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ
著者名:松木 喬
判型:四六判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<著者略歴>
松木 喬(まつき・たかし)
日刊工業新聞社 記者
1976年生まれ、新潟県出身。2002年、日刊工業新聞社入社。2009年から環境・CSR・エネルギー分野を取材。日本環境ジャーナリストの会副会長、日本環境協会理事。主な著書に『SDGsアクション<ターゲット実践>インプットからアウトプットまで』(2020年)、『SDGs経営“ 社会課題解決”が企業を成長させる』(2019年)、雑誌『工業管理』連載「町工場でSDGsはじめました」(2020年1-10月号、いずれも日刊工業新聞社)。

<販売サイト>
Amazon 
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore 

<目次>
第1章 ビジネスは生物多様性に依存している
1-1 企業経営に生物多様性は不可欠なもの
1-2 昆明・モントリオール生物多様性枠組みは企業活動の参考となる活動指針
1-3 「30by30」達成へ、企業緑地も評価する「自然共生サイト」スタート
1-4 求められる情報開示、自然と企業活動との関連は?
1-5 ネイチャーポジティブ達成の道標「生物多様性保全国家戦略」

第2章 専門家が語るネイチャーポジティブ
2-1 〈インタビュー〉馬奈木 俊介氏 九州大学主幹教授
2-2 〈解説〉TNFDの目指すものとその最新状況 TNFDタスクフォースメンバー MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス TNFD専任SVP/MS&ADインターリスク総研 フェロー 原口 真
2-3 〈解説〉海洋におけるネイチャーポジティブの実現と、それを阻むIUU漁業 シーフードレガシー 代表取締役社長 花岡 和佳男
2-4 〈インタビュー〉藤井 一至氏 森林総合研究所主任研究員

第3章 実践企業に学ぶネイチャーポジティブ
3-1 NEC 我孫子事業場 四つ池
3-2 パナソニック 草津拠点「共存の森」
3-3 MS&ADグループ
3-4 キヤノン
3-5 アレフ

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自然回復を優先する「ネイチャーポジティブ」型経済への移行に向けた議論が急速に進んでいる。2022年末に世界目標として合意され、日本は国家戦略を策定した。環境省はネイチャーポジティブ型経済が30年に125兆円の経済効果をもたらすと試算した。企業にはこれまでとは次元が異なる生物多様性回復の行動が求められる。

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