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パナソニックHDが開発、CO2を原料に作物の収穫量を増やす新材料がスゴい

パナソニックHDが開発、CO2を原料に作物の収穫量を増やす新材料がスゴい

開発した材料を散布したホウレンソウ

パナソニックホールディングス(HD)は大気中の二酸化炭素(CO2)を原料の一部に使い、農作物の収穫量を増やす新材料「ノビテク」を開発した。トウモロコシに散布したところ収穫を5割増やす効果が出た。気候変動の抑制と食料の生産性向上に貢献できる材料として2024年度に商品化する。月数トンから量産し、海外にも売り出す。

植物と同じように光合成する微生物「シアノバクテリア」にCO2や水、光、窒素などの無機養分を与え、材料を製造する方法を確立した。シアノバクテリアが光合成で作った代謝物を細胞の外に放出させる技術が、開発につながった。代謝物には植物が持っている成長力を引き出す作用がある。

材料は葉に散布する。実験に協力した農家では、ホウレンソウの収穫量が4割増えた。他にもミニトマトで1―4割増、ナスで2割増、トウモロコシで2―5割増の効果があった。バラつきがあるが、散布すると収穫量の増加が期待できる成果という。また、農作物は病害にも強くなると考えられ、農薬や化学肥料の使用を減らせる可能性もある。

気候変動を食い止めるため各地でCO2の排出削減に取り組まれている。だが、気温上昇が進んでおり、大気中のCO2を吸収する必要性も議論されている。世界的な人口増加や栽培に適した土地の減少によって農作物の生産性向上も急務となっている。

パナソニックHDは新材料の生産を外部に委託し、農業資材メーカーや商社を通じて販売する。同社グループは30年に自社の排出ゼロを達成し、製品を通じて9300万トンの排出削減に貢献する方針。燃料電池などの既存製品に加え、開発した新材料も入れて達成する考えだ。


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日刊工業新聞 2023年04月28日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
各地で「ノビテク」が量産されると、大気中のCO2の削減が期待できます。食料供給を増やすために森林を切り開いて農園が作られていますが、ノビテクによって生産性が高まると森林破壊の抑制にもなります。その分、森林が吸収するCO2も増えます。これからもコベネフィットな商品、技術が増えてほしいです。

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