板金加工会社の「精神論で乗り切る」を変えたロボット導入の効果
岡田鈑金(東京都大田区、増田武夫社長)は、茨城工場(茨城県小美玉市)でロボット導入を加速している。近年では特に、プレス加工の曲げ工程や溶接工程でロボットシステムの整備を推進。増田社長は「生産品目の変種変量などに対応して顧客の困りごとを解決するのが当社の役割。それを実現するためにロボットを活用している」と説明する。大量生産だけでなく少量多品種生産に対応できる柔軟な生産体制の構築を目指している。(茨城・陶山陽久)
東京ドームほどの広大な敷地面積を誇る茨城工場には、設計から板金、プレス加工、溶接、塗装、組み立てまで幅広い技術が集積する。半導体製造装置や研究設備機器、蓄電池など多様な分野の板金部品を製造し、ユニットにまで仕上げて供給できるのが強みだ。
ロボットは10年以上前から導入しており、2012年にはプレス部門に安川電機の垂直多関節ロボットを採用、プレス機間で加工対象物(ワーク)を移送する自動生産ラインを構築した。それ以降も、曲げ加工や溶接工程など複数工程でロボット化を進めている。
板金の曲げ加工では、19年に完成した新工場棟にアマダ製のロボットシステム「HG-1003ARs」を導入した。同システムは1台のロボットが材料の供給と曲げ加工を担う。システム内の特定の位置に材料を重ねた状態で設置すると、カメラが材料を認識し、自動で段取りを組んで加工する。曲げの工数が多い複雑形状の加工にも適している。
同機を含め、ワークのサイズ別に曲げ加工のロボットシステムを計5台設置済み。増田社長は「曲げ加工に関しては大量生産だけでなく、少量多品種の場合でもロボットを活用していきたい」と方針を語る。
また、溶接工程では時間のかかるTIG(タングステン不活性ガス)溶接のロボット化を推進している。現在までに3台のロボットを導入し、1年以内にさらに2台を増やす計画で、従来の人手による作業をロボットに置き換えていく。
溶接工程ではファイバーレーザー溶接のロボット化に取り組んできたが、強度を重視する顧客向けにTIG溶接のロボット化も数年前に始めた。精度の確保が課題だったが、ワークを確実に固定して溶接位置の精度を高める矯正治具を独自開発することで克服した。
複数工程へのロボット導入を同時並行で進めた結果、増産要請などへの対応力が向上した。急激な増産要請があれば、昔は精神論で乗り切っていた。休日出勤を増やし、時には管理者も現場に出ることが求められたが、今はそうした事態に陥ることはない。不測の事態にも冷静に対処できる能力が社内に蓄積しつつあり、ロボットはその一助となっている。
今後は検査工程などでもロボット化や自動化を拡大したい考えで、増田社長は「今はとにかく人が集まらない時代。可能な限りロボット化をしていきたい」と話す。
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