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“白いキャンバス”沖縄の製造業で進む産ロボット活用の今

“白いキャンバス”沖縄の製造業で進む産ロボット活用の今

ロボット活用のニーズ高まりを受けて、地元企業向けの操作講習を初めて実施した(ものづくりネットワーク沖縄提供)

ものづくりネットワーク沖縄(沖縄県うるま市)は、基盤産業の振興を目的に活動する支援組織だ。行政や企業と連携し、沖縄の製造業の底上げに汗を流す。金型技術の確立やデジタルエンジニアリングの推進に取り組む中、産業用ロボットの活用もテーマの一つ。人材育成や先進技術の積極採用を通じて実用化と普及を図る。金城盛順代表理事は「沖縄の製造業は白いキャンバス」と新たなモノづくり形成に意気込む。(西部・三苫能徳)

ものづくりネットワーク沖縄は2012年に設立した。基盤産業が薄い沖縄で、金型や5軸マシニングセンターによる切削加工の技術確立を進めてきた。「モノづくりの種を探しながら、製造業を広げる」(金城代表理事)中で、効率的で先端的なデジタルモノづくりの整備にも注力。3次元(3D)プリンターや同スキャナーを用い、実物測定で設計データを作成する「リバースエンジニアリング」も積極化する。

ロボット活用では、独KUKA製ロボットアームを台湾・東台精機製5軸加工機と並べて運用中。金属加工では、企業からの受託生産を通して加工技術の知見を広げており、大物の加工対象物(ワーク)の運搬にロボットを利用している。

ロボットは作業場内に工作機械と並べて稼働するが、ここに仕掛けがある。装置横の空きスペースで透明なゴーグルをかけると、何もなかった場所に実物の装置と同じ大きさのロボットと加工機が現れる。3DCADで描いたCG(コンピューターグラフィックス)と複合現実(MR)との組み合わせだ。

実際の室内を背景に、製造ラインと加工設備、搬送用ロボットを眼前で見られる。ゴーグルの装着者が移動すると角度や距離も変わる。CGの装置やワークは動いており、アームの動作やレイアウトを現実空間上に置いてシミュレーションできる。

約10年にわたり協業する、NTTデータエンジニアリングシステムズ(東京都大田区)との新たな取り組みだ。両社とも県が製造業の集積地に設けた「素形材産業振興施設」に入居しており、長屋形式の同施設の“お隣さん”同士。ショールームや実証の位置付けで製造設備とMRのシナジーを追求する。

ロボットアーム(左)と5軸加工機を使い加工する。MRとのシナジーも目指す

他方、ロボット人材の育成もスタート。沖縄県うるま市の「コンカレントエンジニア人材養成事業」として、3月に産業用ロボットの操作講習を初実施した。同事業では12年から、複数の開発プロセスを同時並行で進める「コンカレントエンジニアリング」の技術者を養成している。

沖縄の産業界は人手不足や生産性向上が課題。同講習は解決に向けたロボット導入が徐々に進む中で企画したもので、地元企業のニーズに応えた格好だ。

地域に立地する企業から8人が参加。大型・小型のロボットアーム3台を使い、2日間かけて講習を実施。「特別教育」の修了証を発行した。受講後には、より深い内容を学びたいとの意欲的な声も聞かれた。

今後、ロボットと働く仲間をさらに沖縄で増やす機運を高める。

日刊工業新聞2022年5月31日

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