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精密加工向け金型製作が強みの聖徳ゼロテック、協働ロボット採用で導いた成功

精密加工向け金型製作が強みの聖徳ゼロテック、協働ロボット採用で導いた成功

ロボットを台車に取り付けることで、さまざまな場所で使用できるようにした

電子機器などの精密加工向け金型製作に強みを持つ聖徳ゼロテック(佐賀市、古賀忠輔社長)は、プレス加工を担う従業員の負担を減らすため、2019年に協働ロボットを導入した。導入前は費用対効果に懸念があったが、システム構築を自社で行うなどの工夫でコストを抑えることに成功。製造工程だけでなく外観検査などへの応用も見据える。今後もロボットの可能性を模索していく構えだ。(九州中央・片山亮輔)

聖徳ゼロテックは15年に日本ロボット工業会と経済産業省のロボット導入補助事業へ参加した際、3カ月ほど自社工場でロボットを試用した。その時を古賀社長は「稼働効率は人の方が良いが、使い方を考えれば面白い機械だと感じた」と振り返る。

導入のネックとなったのが費用だ。販売会社やシステムインテグレーター(SIer)からの見積もりは、システム構築を含め1000万円ほど。中小企業として安くはない額だけに、直ちに導入には至らなかった。

効果にも懸念を持っていた。聖徳ゼロテックはすべての生産工程でソフトウエアによる数値管理を進め、効率化に取り組んできた。その上でロボットを1台だけ導入して、作業効率の改善が見込める工程がなかなか見つからなかった。

導入したオムロン製の協働ロボットでのプレス加工

業務環境の変化を見越した憂いもあった。「今年作っていた部品が来年には生産終了ということもありうる。ロボットの効果を最大にするために、どの工程に取り入れるかが悩みどころだった」(古賀社長)という。

ロボットを導入しても製作する部品がなければ意味がない。どの生産ラインに組み込めば効率が良いか知恵を絞った結果、台車にロボットを固定するアイデアが生まれた。移動が可能なため、さまざまな製造工程にロボットを設置できる。社員の負担軽減も含めて、コストに見合う効果が見込めると判断。19年にオムロン製の協働ロボット導入に踏み切った。

導入に当たっては企業支援機関である佐賀県地域産業支援センターの補助金を活用。システム構築を自社で行うことでコストを抑えた。プログラミングやティーチングについては簡単で操作しやすいと社内で好評を得ている。古賀社長には「当社で培った金型に関するロボット導入のノウハウは他社にも展開できるかもしれない」と、新たなビジネスの構想が浮かぶ。

導入後も課題は尽きない。人と比べるとロボットの作業はまだまだ時間がかかる場合がある。古賀社長はロボットについて「ハードウエアというよりもソフトウエアだ。普通の機械のようにすぐ使えるわけではない。現場で育てていく必要がある」と認識する。他の製造工程における利用価値も探る。

ロボットが活躍する場は製造工程だけとは限らない。「品質保証のための外観検査など、人の感覚だけでは難しい分野にも使い道があるのでは」とロボットと働く可能性を追求していく。

日刊工業新聞2022年10月6日

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