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ニッチだけど高シェア、21年12月期に過去最高益を達成した日置電機の課題

高付加価値分野好調“好循環”続く

日置電機は長野県上田市に本社を置く計測器メーカー。各種計測器を製造し、ニッチだが高いシェアを持つ企業だ。近年は自動車の電動化で急激に市場が拡大し、高付加価値分野でもあるバッテリーの計測器や試験器の出荷が好調で、2021年12月期は過去最高益を記録。かねて財務体質も良好で「海外投資家からの問い合わせも増えている」(同社担当者)という。

21年12月期の同社の自己資本比率は80・9%。17―18年は88%台、19年は89%台、20年は85%台で、前年度に比べ4%程低下しているが、これは「業績が好調なため業績連動型の賞与の引き当てが増加した影響がある」(総務部経理課の清水徳之課長)。いずれにせよ、自己資本比率は高原状態だ。

自己資本当期純利益率(ROE)は21年12月期で16・3%。好調な業績を追い風に大きく上昇したが、これまでも17年は9・1%、18年は11・8%、19年は8・9%、20年は8・1%と安定して良好な水準を維持している。

同社の決済は現金が基本で、外注への支払いも現金。「お願いして現金に変えてもらってきた」(清水課長)という。借入金もなく、おおむね年間10億円程度の設備投資も、組み立てがメーンのため高額設備への投資が少ないこともあり自己資金で賄っている。

一方、研究開発費は対売上高比率で18―20年度は10%超、21年度は業績が伸びたため比率こそ低下したが、金額は27億円と前の3期を上回るレベル。22年度はさらに32億円への積み増しを計画しており、研究開発重視の姿勢だ。

好調な業績と良好な財務体質、さらに高付加価値なバッテリー向け計測器の出荷拡大で収益性が向上するなど、同社にとって好循環の状況にある。逆にこうした企業体質がまだまだ投資家に衆知されていないことが課題の一つといえそう。現状、株主に占める海外投資家の比率は10%弱で、徐々に増加しているとはいえ低水準。今後は国内だけでなく海外での積極的な情報発信なども検討課題になりそうだ。

日刊工業新聞 2022年11月10日

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