コロナで相次ぐ大企業の減資、特に目立つ業種は?
2021年度上期(4―9月)に資本金を1億円以下に減資した企業は684社となり、20年度実績の997社を21年度通年で大幅に上回る見通しであることが、東京商工リサーチ(TSR)の調査で分かった。現在のペースで推移すれば、1400社を超える可能性があるとみる。1億円以下に減資すると税制上中小企業になり、優遇措置を受けられる。コロナ禍の影響が大きいサービス業など大企業の減資が相次ぐ。
上期の産業別では、「サービス業他」が203社で最多。「情報通信業」の130社、「運輸業」の23社は、20年度実績より産業別構成比が増えた。「製造業」は124社で、構成比は20年度実績より1ポイント減った。
金額を問わず減資した企業の全体数も調べた。1824社で、20年度実績の3321社を大幅に上回るペースで推移する。産業別は「サービス業他」が553社で最多。「製造業」は302社で、構成比は20年度実績より1・9ポイント増えた。
製造業の構成比が、1億円以下への減資企業では減り、全体数では増えたことについて、TSRは「規模の小さい企業が業績悪化で減資したケースが多い」と分析する。
減資には信用低下のリスクがあるが、大企業が1億円以下に減資しても低下しづらい。その上、中小企業化による税制優遇措置を受けられる。TSRは「資本金以外で中小企業を定義するなど見直しが必要になるのでは」と指摘する。
目立つ「旅行・航空」 資本政策に柔軟性・機動性
資本金を減資する企業が相次ぐ中、とりわけ目立つのが旅行会社や航空会社だ。新型コロナウイルス感染拡大が長期化し、人の往来が低迷。緊急事態宣言解除後も需要の回復は途上にある。減資で財務体質改善や税負担軽減につなげる。
日本旅行は資本金を40億円から1億円にすることを決めた。12月14日に実施する。同社は2020年12月期連結決算で当期損益が127億円の赤字だった。21年1―6月期も6億円の赤字と依然苦しい状況にあり、6月末時点での自己資本比率は11・5%まで低下した。減資で資本政策に柔軟性、機動性を持たせるのが狙いだ。
このほか、旅行会社ではJTB、航空会社ではスカイマークが減資して資本金を1億円にしている。