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金属加工メーカーの底力が光る、「オーロラの炎」を追求した薪ストーブ

【連載】中小企業のグッドなモノづくり #1 寿産業
金属加工メーカーの底力が光る、「オーロラの炎」を追求した薪ストーブ

寿産業の薪ストーブ「ファイヤーグラフィックス ブリス」

SNSでふと目に留まる、耐久性が高く、シンプルで、少し凝った機能性を持つキャンプ用品や食器など。それらを手掛けるのは大手メーカーではなく、中小企業。それも産業機器や自動車向け部品など、一般消費者の目に触れることの少ない製品を作る企業、といった例が増えています。それらの製品、その背景にある苦労や工夫を取材しました。

美しくうねるオーロラのような炎を楽しめる薪ストーブ「ファイヤーグラフィックス ブリス」。持ち運びができ、アウトドアで使用するほか、煙突を拡張すれば屋内設置も可能だ。同様の薪ストーブは大型で100万円近くになるが、同製品は重さ17キログラムと小型化し、価格も10万7800円(消費税込み)に抑えた。

この薪ストーブを開発した寿産業(神奈川県秦野市)は、精密板金やレーザー加工を主な事業とする。産業機械や自動車、住宅向け部品の加工を行っている。2000年ごろから自社製品開発に着手。「CAP」という自社ブランドでサーフボードラックやバギーチェアなどアウトドア用品を広く手掛けてきた。コロナ禍による受注生産の落ち込みを機に、新たに自社ブランドの薪ストーブを発売した。OEM(相手先ブランド)で薪ストーブを製造していた知見をもとに開発を進めた。空気の流れを制御し薪を二次燃焼させることでオーロラのような炎を実現。窓にすすが付かない設計にたどり着いた。コロナ禍でキャンプ需要が高まっていることを意識し、「着手から半年で6台試作し、ブラッシュアップを急いだ」と布田昭人社長は振り返る。デザインから製造まで一貫して社内で行うことで、製品化を迅速に行えた。

同社の製造現場

20年に発売し、これまで250台ほどを販売した。アウトドアイベントへの出店を通じ知名度を向上させるとともに、交流サイト(SNS)で利用シーンや感想が拡散され集客につながっている。4月にはステンレス製の薪ストーブを米国のクラウドファンディングに出品したほか、顧客からの要望をもとにサウナ用ストーブも開発中だ。「薪ストーブブランドとして日本一を狙う」と布田社長は意気込む。

現在、売上高に占めるBツーC(対消費者)向け製品の割合は10%程度だが、製品を見た企業からOEM依頼が来るなど好循環を生んでいる。BツーB(企業間)製品の生産計画の波を補完する形でBツーC製品を生産することで工場の安定稼働にもつながっており、「自社製品を持つメリットは自社のペースで事業展開できる点」と布田社長は実感を込める。

米国のクラウドファンディングに出品したステンレス製の薪ストーブと布田社長
日刊工業新聞2022年5月27日再構成
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
寿産業は板金工程だけでなく塗装などの工程も持っており、一貫して製品を生産できる点も強みです。布田社長は新製品開発に意欲的に取り組んでいて、新製品も増えていく予定とのこと。これから薪ストーブが本格的に稼働する季節ですので、アウトドア好きの方はぜひチェックしてみてください!

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中小企業のグッドなモノづくり
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