「ワーケーション」に商機見出すスタートアップのあの手・この手
コロナ禍が働き方に変化を引き起こしている。観光地やリゾート地でテレワークを活用して働きながら休暇を取る「ワーケーション」市場にスタートアップも商機を見いだしている。リモートワークの普及でコロナ禍での外泊リスクを抑えつつ、快適な空間での仕事や企業合宿を求める需要は高い。これらを実現するツールやサービスをスタートアップが提供、新たなワークスタイルを提案する取り組みが各地で行われている。(山下絵梨)
Colere(コレル、長崎県壱岐市、共同創業者=讃岐谷真之氏、中村駿介氏)は4月、九州北部の玄界灘沖にある離島・壱岐島にワーケーション施設「ACB Living(アシベ リビング)」をオープンした。同社の組織開発や人材開発のノウハウを生かした企業研修のコンテンツを提供する。シェアオフィスはカフェスペースと共同キッチン、研修室兼コワーキングスペース、シェアオフィス、個室ワークスペースを二つの建物に分けた。利用者が行き来することで「まちの人たちと混ざり合い、新しい関係性を築くことができる」(コレル)のが特徴だ。
matsuri technologies(東京都新宿区、吉田圭汰社長)はワーケーションや企業研修での利用を想定し、貸別荘の平日の連泊利用を割り引くプランを始めた。静岡県・伊豆高原の貸別荘「S―villa伊豆ルネッサ赤沢」は会議や研修などで利用できる部屋とWi―Fi(ワイファイ)を完備する。サウナ付き露天風呂やバーベキューも利用でき、企業合宿や社員研修だけでなく福利厚生として従業員の家族の旅行先としての需要も見込む。
都心からの近さを生かした手軽なワーケーションの利用も増えている。CAWAZ(カワズ、埼玉県日高市、北川大樹社長)の複合型ワーケーション施設「CAWAZ base」は、2021年5月のオープン以来約2万人が利用した。同施設は埼玉県日高市高麗地区に位置し、夏季は高麗川の川遊び、秋は紅葉狩りや自然散策、冬は焚火を囲む交流の場として利用が拡大。自然環境を生かしたアウトドアの拠点に加え、東京近郊からの手軽なワーケーションの拠点として「近隣だけでなく都心の企業が開発会議やテレワーク推進の一環として利用している」(カワズ)。
ワーケーションはビジネス旅行による消費拡大に寄与することから、国も普及を後押ししている。だがアスマーク(東京都渋谷区、町田正一社長)の調査によると経営者の5割がワーケーション制度に「興味なし」と回答するなど課題も多い。ワーケーションの導入、定着については社員の休暇取得促進といった企業への理解促進も求められている。