ニュースイッチ

テントに32泊して最適な寝心地を追求 ウレタンメーカー発マット

【連載】中小企業のグッドなモノづくり #2 浜口ウレタン
テントに32泊して最適な寝心地を追求 ウレタンメーカー発マット

浜口ウレタンのマット「タビジ」と枕「ワラジ」

ウレタンの力でキャンプでの快眠を実現したい―。自動車部品などのウレタン製品を製造する浜口ウレタン(浜松市西区)は、2021年アウトドア事業に参入した。3月に発売したシュラフ(寝袋)マット「TABIJI(タビジ)」は、低反発ウレタンの下に底付き感を防止する厚みのあるウレタンを重ね、快適な寝心地と断熱性を両立。ウレタンに竹炭を練り込むことで消臭と吸湿効果をプラスした。分割し小型化して持ち運べるほか、いす用のクッションとしても使用できる。

分割して利用できる

同社が自社製品開発を開始したきっかけは東日本大震災だ。ゴムボートに代わるような耐久性の高いウレタン製ボートを開発。そこから約10年かけ自社製品開発のノウハウが蓄積されたことから、BツーC(対消費者)製品開発に着手した。

プロジェクトメンバーが趣味を通じ、同業の参入があまりなかったアウトドア用品に着目した。社内ブランド「HamaureHike(ハマウレハイク)」を立ち上げ、第1弾製品のアウトドア用枕「WARAJI(ワラジ)」を21年に発売。好評だったことから、技術を横展開し、タビジの開発を進めた。

アウトドア用枕「WARAJI(ワラジ)」

ウレタン原料のブレンドから自社で行う特性を生かし、専用の素材を開発。最適な厚みや快適性を試行錯誤し、実際にテント泊で使用することで検証した。プロジェクトを率いる開発・第二営業の藤原大輔次長は「(検証のため)夏冬問わず32泊した。一番初めに作ったマットは痛くて寝られなかった」と振り返る。

パッケージデザイン、PR動画制作など製品に関わる全ての工程を自社で行うことにこだわった。製品のネーミングコンテストなど社内を巻き込みながら進めた。自社製品開発を経て、「自発的に考えアイデアを出す風土が育ってきた」(藤原次長)という。

3月にクラウドファンディングサイトで先行発売し、159枚の注文があった。今後電子商取引(EC)サイトで販売を予定する。販売予定価格は1万9800円。
 アウトドアでは意外と座る時間が長いにもかかわらず、アウトドア用のイスは携帯性や軽量性が重視されることが多い。「ウレタンの醍醐味はイス。座ってこそ良さが伝わると思っているので、今後はウレタンアウトドア用のイスを作りたい」と藤原次長は意気込む。

日刊工業新聞2022年6月17日一部加筆・再構成
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
同社では自社製品開発のチームをつくり、定期的に企画会議や試作を行っています。アウトドア用品に限らず、今後も別の分野での自社製品を開発していきたいと意欲的でした。

特集・連載情報

中小企業のグッドなモノづくり
中小企業のグッドなモノづくり
SNSでふと目に留まる、耐久性が高く、シンプルで、少し凝った機能性を持つキャンプ用品や食器など。それらを手掛けるのは産業機器や自動車向け部品など、一般消費者の目に触れることの少ない製品を作る中小企業、といった例が増えています。製品、その背景にある苦労や工夫を取材しました。

編集部のおすすめ