「農業女子プロジェクト」賛同10年、井関農機が商品開発に生かしたこと

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農機の使い勝手向上は性別に関わらず共通課題に

井関農機が農林水産省提唱の「農業女子プロジェクト」に賛同、女性仕様のトラクター「しろプチ」などを発売してから10年近くが過ぎた。発売当初は白色のカラーリングや日よけサンバイザー装着などが注目されたが、現在は女性専用をうたった農機は特にアピールはしていないようだ。他方で開発で培った使いやすさ、取り扱いガイドの分かりやすさなどの視点は現在でも引き継がれ、トラクターや草刈り機、野菜苗移植機など各種の商品開発で活用されている。(編集委員・嶋田歩)

井関農機が農業女子プロジェクトに参画したのは2013年11月で、同プロの発足と同時だ。その後、開発商品として第1弾のトラクター「しろプチ」を15年6月に世に送り出したのを皮切りに、第2弾のミニ耕運機「ちょこプチ」、第3弾の歩行型草刈り機「プチもあ」を商品化し、注目を浴びた。

並行して女性農業者を対象とした農機取り扱いセミナーを14年にスタート、これまでに合計43回開催したほか「農機操作方法を書いたマニュアルが厚過ぎて分かりにくい」との女性の声に応え、「取り扱い簡単マニュアル」を作成した。

国内農業は従事者の約4割を女性が占める。他方でトラクターの運転者などはほぼ男性であり、機械の設計や操作マニュアルもそれを念頭に置いたものが多かった。井関農機が女性を対象にした農機取り扱いセミナーでは「農業機械の使い方やメンテナンスについて家族も含め周りに聞ける人がおらず、学ぶことができた」「地域の女性農業者同士がつながるきっかけになった」といった前向きな評価の声が多かった。

女性仕様トラクターなどで注目された白色などの“農機らしからぬカラー”は、実際にはほとんど影響しなかったようだ。「女性だからピンク色がいい、などと安易に思わないでほしいと言ってきた女性農業者もいた」。井関農機の勝野志郎執行役員は打ち明ける。

改善要望が多かったのは「男性との体格差から、ハンドルやペダルに手足が十分に届きにくい」「エンジン始動方法などを忘れてしまうことがある。使い方を分かりやすく表示してほしい」など使い勝手に関する事柄。草刈り機では「レバーが握りづらい」「旋回動作がもっと楽に行えたら良い」などの声も挙がり、これらはいずれもその後の農機開発に反映された。

「女性が使いやすい農機、ということは、誰もが使いやすい農機ということ」と勝野執行役員は強調する。高齢農業者も増え、乗りやすさや操作のしやすさ、分かりやすいマニュアルを求める声は女性だけのものではなくなった。大規模農業法人の新規就農者には若手も多い。若手も同様に、農機に「使いやすさ」を求めている。

コロナ禍もあり、対面の農機取り扱いセミナー以外にオンライン座談会も20年から計6回開催している。「対面セミナーとオンライン座談会などで全国の女性農業者の生の声を吸い上げ、製品開発に生かしていきたい」と勝野執行役員は語る。

日刊工業新聞2022年8月4日

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井関農機 農林水産省

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