TOTOが定年延長で払拭したい課題
TOTOは2022年度、国内のグループ社員の定年を現在の60歳から65歳へ段階的に引き上げる。同時に過去の評価・経験よりも、役職・役割と成果を重視する人事制度へ変更。定年の延長で若手が管理職になりにくくなる課題を払しょくし、全世代が活躍できる職場づくりを目指す。
同社は従来、経験値や昇格試験で差をつける「管理職社員資格」という制度を設けていた。この制度に課長などの役職を掛け合わせた「マトリクスによる処遇」(人財本部の前原典幸本部長)を実施。例えば同じ課長でも2級、3級などと資格試験のような等級で処遇が異なっていた。新制度への移行に伴い、資格制度を廃止し、役職・役割で評価する制度に切り替える。
管理職の場合、定年延長で管理職を続投するのではなく、その都度、個別判断となる。「取締役など経営層や周囲の意見も聞きながら判断する」(前原氏)ことで、本人も周りも納得感のある評価を行い、公平な処遇を狙う。管理職がみな定年延長で一律に管理職続投とはならず「若手にも管理職の機会が回ってくる」(同)仕組みにする。
21年夏頃から社員に説明をはじめ、当初は管理職の世代交代が遅れるなどの誤解もあり、質問が多かったという。しかし、繰り返し説明を行い「今ではポジティブに受け止める社員が多い」(同)としている。
「契約社員」として65歳まで働ける制度はあった。新制度は「正社員」として定年を延長する仕組みで、労務費が増加する懸念がある。だが「人財投資の一環」(同)と捉え、導入を決めたという。シニア世代の技能やノウハウは「会社の財産」との見方だ。
TOTOは女性や若手の活躍を促す多様性を推進してきた。新制度でシニア世代の活躍も促し人材の多様化に一段と取り組む。
日刊工業新聞2022年4月12日