目指すのは「誰にとっても快適なトイレ」、法改正の押しで広がる男女共用トイレ

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東京ポートシティ竹芝のオールジェンダートイレ

オフィスや公共施設で男女共用の“オールジェンダートイレ”が徐々に広がっている。男女別々のトイレではトランスジェンダーの人にとって利用しづらいため、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある「誰一人取り残さない」ことに配慮した動きが相次ぐ。トイレメーカー大手は誰にとっても快適なトイレのあり方を模索している。6月にトランスジェンダーなどへのハラスメント防止を義務付ける法律が施行され、トイレを含む対応に乗り出す企業がさらに増えそうだ。

オールジェンダートイレはこちらです―。9日、東急不動産が開発した東京ポートシティ竹芝(東京都港区)開業前の記者説明会。案内係がオールジェンダートイレを紹介する姿があった。

2019年に完工した東急不動産が本社を置く渋谷ソラスタや3月に設置を公表した鳥取大学鳥取キャンパスなど、オールジェンダートイレを整備する動きが徐々に広がってきた。TOTOのUD・プレゼンテーション推進部の佐藤敬子氏は「新しく建てるビルについては不動産会社からオールジェンダートイレの相談が入ることが多い」と語る。

問題は新築ビルより圧倒的に多い既存ビルのトイレをどうするかだ。全面的に作り替えるにはコストがかかる。最近は「トイレの入り口のサイン(標識)をどう工夫すればよいか意見を求められることが増えた」(佐藤氏)。サインだけならコストは限られ、取り組みやすいためだ。

TOTOは適切なサインのあり方を探るため「サインの色」に関するアンケートを実施、8月に結果を公表した。それによると、女性は赤、男性は青など性別を意図したトイレの着色を巡り、当初、トランスジェンダーは抵抗を示すことが予想されたが、駅や商業施設のトイレにおいては視認性や識別性などから男女別の着色が「壁面に広く出ているサインが最も好ましい」との結果が出た。

東京ポートシティ竹芝のオールジェンダートイレ

佐藤氏は「利用シーンによってサインの考え方はさまざま。これが正解だという答えはまだない」と指摘。トランスジェンダーを含む誰にとっても適切なサインのあり方を引き続き研究していく方針だ。

LIXILは本社(東京都江東区)新棟1階に男女共用のトイレを設置、4月に本格運用を始めた。廊下を歩いて一番入りやすい中央に男女共用トイレ、右に曲がると女性用、左に曲がると男性用のトイレを置く。やってきた人は一瞬、どこに入ろうか迷う。「トランスジェンダーの人はいつも迷っている。同じ体験をすることで、トランスジェンダーを理解する一助になれば」と、LIXIL営業本部の石原雄太氏は狙いを語る。同社はこのトイレをオールジェンダートイレの設置を検討中の顧客に紹介し、議論を深めるツールとして活用している。

LIXIL本社の男女共用トイレ

オールジェンダートイレが広がる背景について、電通ダイバーシティ・ラボの阿佐見綾香氏は「LGBT(性的少数者)という言葉が浸透し、最近はより個別で具体的な解決策をどうすべきか検討するフェーズに入ってきた」と指摘する。例えばレズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)は性的指向であり、見た目と自認する性が異なるトランスジェンダーのような“トイレ問題”は生じない。LGBTとひとくくりにせず、「個別の課題に目を向けるようになってきた」(阿佐見氏)という。

問われる企業の対応

トイレを含む、LGBTが働きやすい環境整備に向け「今後、ますます企業の対応が問われてくる」と語るのは、この問題に詳しいNPO法人グッド・エイジング・エールズ(東京都渋谷区)の松中権代表。6月に労働施策総合推進法の改正案(パワハラ関連法案)が施行され、企業はSOGI(性的指向と性自認)に関するハラスメント防止対策が義務付けられた。「オカマ」と言って社員をからかうのは法令違反になりうる。こうした法律も後押しとなり、オールジェンダートイレを採用する企業が増えつつある。

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