【ディープテックを追え】宇宙実験を手軽に、スタートアップが新市場開拓を目指す

#69 ElevationSpace

  • 1
  • 0

国際宇宙ステーション(ISS)の運用が2030年で終わりを迎える。宇宙船では米スペースX、人工衛星の民間打ち上げが普及するなど宇宙利用が民間にゆだねられるなか、宇宙ステーションもその仲間入りをしそうだ。東北大学発スタートアップのElevationSpace(エレベーションスペース、仙台市青葉区)は宇宙実験ができる人工衛星の打ち上げを構想する。

きっかけは「宇宙建築」

小林CEO

当時、秋田県に住む高専生だった小林稜平最高経営責任者(CEO)は宇宙建築に魅せられた。東京都で活動する宇宙建築団体のイベントにオンラインから参加するなど、「非常に衝撃があった」と当時を振り返る。ただ、月面基地や建築物を建てることは技術的にもビジネス的にも難しかった。そこで目を付けたのが宇宙ステーションに近い性能を持つ人工衛星だ。「実験ができる人工衛星であれば、月面などに設置して宇宙建築に応用することもできる」と力を込める。

宇宙実験を安価に

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の公開資料によると、ISSの日本の実験棟「きぼう」を有料で使う場合、物資の打ち上げ費用が1キログラムあたり330万円、回収費が同550万円、宇宙飛行士の作業費が1時間あたり550万円などの例が挙げられている。

機体イメージ

エレベーションスペースは宇宙実験ができる無人の人工衛星を打ち上げる。小林CEOは「現状よりも10分の1、数百万円で宇宙実験できるようにする」と意気込む。23年に100キログラム級の小型人工衛星を打ち上げる計画。運用期間を終えた衛星を大気圏に突入させる「大気圏再突入技術」の実証を行う。物体が大気圏に投入する際に発生する空力加熱に耐える必要がある、難易度の高い技術だ。同技術の開発は東北大と共同開発する。同社は再突入させた衛星を海上で回収する構想だ。

実証衛星にはユーグレナが開発するミドリムシの実験装置を搭載する。約半年後の24年にミドリムシを回収し、変化を調べる。宇宙旅行向けの食品などの活用する可能性につなげる。

26年の商用化を目指す

実験用の試作品

26年の商用化を目指す。商用衛星は重量が800キログラムで、1度に200キログラムの物資を打ち上げできるようにする。小林CEOは「2か月に1回のペースで打ち上げ、最大半年間、宇宙空間に滞在できるようにしたい」と展望を話す。現在のISSの実験では、宇宙空間での細胞や植物の生育を観察し、人が宇宙で暮らすための要件を見定める基礎研究の意味合いが大きかった。同社は定期的かつ安価に宇宙で実験を行えるようになれば、別の需要も生まれると見ている。一つが宇宙空間で製品を作ることだ。地球とは材料などの反応速度や成長が異なる。この性質を利用して、地球では作れない製品を作ることを構想する。また宇宙旅行が広がることも見据え、製品の耐久試験なども実施したいという。国内外の企業と協業することで事業を推進する。

宇宙ステーション並みの設備と大気圏再突入が実装できれば、有人輸送などそのほかの分野にも応用が広がる。もちろん宇宙を目指したきっかけである、宇宙ホテルや月面基地などの宇宙建築にもつながる。実験用の人工衛星は「夢」につながる第一歩だ。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
また、自薦、他薦を問わず情報提供も受け付けております。
情報提供の際は、ニュースイッチ deeptech情報提供窓口  deeptech@media.nikkan.co.jpまでメールをお送りください。
メール送付時に、会社の概要を記した資料またはHPのURLをご記載ください。
「 ディープテックを追え VOL.1」はこちらから
「 ディープテックを追え VOL.2」はこちらから
「ディープテックを追え VOL.3」はこちらから
「 ディープテックを追え VOL.4」はこちらから
「ディープテックを追え VOL.5」はこちらから
「 ディープテックを追え VOL.6」はこちらから
「ディープテックを追え VOL.7」はこちらから
「ディープテックを追え VOL.8」はこちらから
「 ディープテックを追え VOL.9」はこちらから
「ディープテックを追え VOL.10」はこちらから

ニュースイッチオリジナル

特集記事

【ディープテックを追え】「最後の砦」救急医療にもAIの力 (2022年03月17日公開)
【ディープテックを追え】ワイヤレス給電、実用化迫る。京大発スタートアップは「高電力」に照準 (2022年03月21日公開)
【ディープテックを追え】難病・網膜色素変性症を「注射」で治療を目指す (2022年03月24日公開)
【ディープテックを追え】水で進む衛星エンジン、宇宙の「持続可能」な開発を狙う (2022年03月28日公開)
【ディープテックを追え】窓ガラスで発電!?京大発スタートアップが透明太陽電池の実用化を目指す (2022年03月31日公開)
【ディープテックを追え】希少疾患・骨肉腫を標的に、大学の創薬シーズの実用化に挑む (2022年04月04日公開)
【ディープテックを追え】宇宙実験を手軽に、スタートアップが新市場開拓を目指す (2022年04月07日公開)
【ディープテックを追え】食品サプライチェーンを持続可能に。「誰でも」陸上養殖できる装置とは? (2022年04月11日公開)

COMMENT

小林健人
デジタルメディア局DX編集部
記者

国際宇宙ステーションの退役によって民間ビジネスのチャンスが生まれるのは良い兆候です。安定して打ち上げる技術など、課題はあるものの、成功に期待したいです。また、宇宙空間で製造業を行うことができれば、周辺の装置産業も生まれるかもしれません。

関連する記事はこちら

特集

このサイトでは、アクセス状況の把握や広告配信などのためにクッキー(Cookie)を使用しています。オプトアウトを含むクッキーの設定や使用の詳細についてはプライバシーポリシーページをご覧ください。

閉じる