二桁成長を続ける「逞しい」プロテインパウダー市場。需要をどう見る?
昨今の激しい消費者需要の変化は多くのメーカーを悩ませている。しかし、そのような先行き不透明で予測が困難な時代のトレンドなぞどこ吹く風とばかりに二桁成長を続ける「逞しい」市場がある。プロテインパウダー市場である。
富士経済の調べ(注1)によれば、2021年のプロテインパウダー市場は930億円規模と推定され、2019年から連続して2桁の成長が続いているとのことである。店頭ではアスリート向けの定番品に加えて「ラムネ味(注2)」などが並ぶ、目にも楽しい商品カテゴリでもある。
同市場の活況はコロナ感染症の流行に伴う「巣ごもり需要」によるブームとも言われる。しかし、同レポートはこの市場が2015年以来直線的に成長をつづけていることに注目する。この傾向を手掛かりの一つとして、2026年には同市場が1,500億円規模に至ると予測している。
SCMの世界ではこのような過去の時系列データやパブリックデータ、専門家の定性的な知見等に基づいて将来の需要状況を推定する活動を「需要予測(デマンド・フォーキャスティング)」と呼ぶ。これに対して、『企業が供給活動を行うにあたりどのような需要情報をその対象とするのかという点について意思決定するための活動(注3)』は「デマンド・マネジメント」と呼ばれる。
企業の供給活動は、かならずしも需要予測そのものに基づいて計画されるわけではない点に注意を要する。需要予測の数値に意志を加えて需要計画を作り、これを吟味するところから供給活動は動き出す。この需要計画は需要予測より大きい(=アクセルを踏む)こともあれば、小さい(=ブレーキを踏む)こともありえるのだ。
前出のプロテインパウダー需要は規模の面で2桁成長が続くことが予測されていた。その一方で商品の種類も増えている状況であった。このような規模(volume)と種類(variety)が共に大きい環境においてどのような需要情報を供給活動の対象とすべきか、その「適否」を判断する活動がデマンド・マネジメントなのである。
(注1:富士経済プレスリリース2021年11月15日「拡大加速する、たんぱく補給食品市場を調査」)
(注2:森永製菓「商品情報」2021年3月)
(注3:山本圭一・水谷禎志・行本顕『基礎から学べる!世界標準のSCM教本』第3章より)
【著者紹介】
MTIプロジェクト
『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞社)』の著者である山本圭一、水谷禎志、行本顕の三名による世界標準のSCMの普及推進プロジェクト。
プロジェクト名はグローバルSCMのコンセプトを各人の名字の一文字を用いて表した「水山行」をラテン語風に読んだ”Mare, Terra, Itinera”の頭文字より。
書籍紹介
SCMは天然資源から最終消費者までのものやサービスと意思決定の流れを統合的に見直し、プロセス全体の効率化と最適化を実現するための手法。本書は世界でビジネスをする企業に最適な、世界標準のSCMについて解説する。
書名:基礎から学べる!世界標準のSCM教本著者名:山本圭一、水谷禎志、行本顕
判型:A5判
総頁数:240頁
税込み価格: 2,420円
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