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深刻化する食糧危機からサプライチェーンを想像してみよう

今こそ知りたい世界標準のSCM #2

毎年1月に米国ラスベガスで催される世界最大の民生機器見本市がCES。今年はソニーのEV参入が話題をさらったが、新たに展示カテゴリーに加わったのがフードテックだった(注1)。そのフードテックの新興企業が登壇するパネルディスカッションで語られていたのは、食品ロスや食料不足を含む食糧危機であった。食料不足と言っても読者にはピンとこないかもしれない。しかし、現在80億人の地球人口が2050年に100億人に増えるという予測がある(注2)。食料不足のリスクが存在しているのだ。

さて、日本では食品ロスが社会課題の1つとして取り上げられている。日本の食品流通業界には「3分の1ルール」と呼ばれる商慣行がある。これは卸売企業が小売企業に食品を納品できる期限を、賞味期限の残り3分の1までとするというものだ。食品ロス削減に向け、このルールは緩和される方向に進んでいるが、実は食品ロスは食品サプライチェーンの別の場所でも起きている。

食品は農産品・水産品を原材料とする。農産品に着目すると、農場で成熟した農作物が人手不足のために収穫されない、出荷された農作物が需要地に届くまでの鮮度低下により販売されない、といったロスが起きている。このような問題に対処するため、走行路が凸凹な農場で収穫済み農作物を搬送する小型ロボット、農作物が放出するエチレンガスを抑制し農作物の成熟速度を落とす防腐剤を提供する新興企業がCESのパネルディスカッションに登壇していたことが印象的だった。

サプライチェーンとは、様々な企業や人々の活動が相互に関連することによって、モノやサービスがエンドユーザーに供給される仕組みを指す概念である。また、原材料サプライヤーから最終消費者に至るサプライチェーン上の業務全体をマネジメントすることを、サプライチェーンマネジメント(SCM)と呼ぶ。加工食品メーカーは消費者に届ける製品をいつどれだけどこで製造しどこに保管するか、原材料をいつどれだけどこから調達するかを決め、それを実行する。同様に農産品等のサプライヤーはサプライチェーン下流からの需要を満たすべく、どれくらいの規模の農場を確保し、いつどれだけ何を栽培するかを決め、それを実行する。私達が日々摂取する食品がどのように作られるかを想像してみると、サプライチェーンとSCMをおわかりいただけるのではないだろうか。

山本圭一・水谷禎志・行本顕「基礎から学べる!世界標準のSCM教本」より

実はCESのフードテックで一番の驚きは、菌類から代替シーフード製造を試みるスタートアップが登場したことだった。信頼できる友人が試食してから食べてみたいものだ。

出所:最終アクセス日は2022年1月5日
(注1)CESウェブサイト“FOOD TECHNOLOGY”
(注2)国連ウェブサイト“World Population Prospects 2019 Highlights”

【著者紹介】
MTIプロジェクト
『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞社)』の著者である山本圭一、水谷禎志、行本顕の三名による世界標準のSCMの普及推進プロジェクト。
プロジェクト名はグローバルSCMのコンセプトを各人の名字の一文字を用いて表した「水山行」をラテン語風に読んだ”Mare, Terra, Itinera”の頭文字より。

書籍紹介

SCMは天然資源から最終消費者までのものやサービスと意思決定の流れを統合的に見直し、プロセス全体の効率化と最適化を実現するための手法。本書は世界でビジネスをする企業に最適な、世界標準のSCMについて解説する。

書名:基礎から学べる!世界標準のSCM教本
著者名:山本圭一、水谷禎志、行本顕
判型:A5判
総頁数:240頁
税込み価格: 2,420円

<販売サイト>
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