サプライチェーン強靭化の道筋は見えるか ~サプライチェーン高度化と日本企業の現在地~後編

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写真はイメージ

世界的なパンデミックにより、調達・生産・物流・販売といったサプライチェーンは、出荷・物流の遅延や、不透明な需要予測による生産抑制といった様々な課題に直面した。今日においても横たわるこの問題に対して、海外の取り組みから見えてくる日本の現状を踏まえ、「サプライチェーンの高度化」について考えてみたい。前編に引き続き、サプライチェーン高度化を推進していくにあたり必要となる「サプライチェーンの高度化ステップ」の第2ステップ以降について紹介したい。

【サプライチェーンDX】

サプライチェーンデジタル化の次のステップとして、「サプライチェーンDX」がある。このステップは、局所的な個別最適化ではなく、あくまで分断化・サイロ化防止のため、業務横断で自社を取り巻く、社内外のエコシステムの全体最適を目指す。例えば、調達プロセスのみではなく、物流プロセスや販売プロセスに至るまで、分断なくデータ連携が可能で透明性がある状態を言う。サプライチェーンに関わる業務データが全て単一基盤で集約され、業務横断での可視化が実現でき、データが利活用できるイメージだ。

弊社顧客の日本の製造業では、経営戦略のもと、デジタル推進本部という業務横断/横串でDX化を図る部署ができたことにより、一気にDX推進が加速した。日本企業において、DXが進まない要因として、IT部門のガバナンス統制や組織の壁(足並みが揃わない)があるかもしれない。ある企業では、業務領域ごとに既存システムが存在していたが、サプライチェーンDXプラットフォームにより、各システムへの取引先との授受データを集約管理できるサービスを活用し、業務横断でのデータの可視化を可能とした。各領域の現場データが集約され、現場で活用できることが競争優位性を高めると考えている。

【サプライチェーンレジリエンス/エシカルサプライチェーン】

次なるステップは、「サプライチェーンレジリエンス」や「エシカルサプライチェーン」など具体的なテーマに基づく最適化である。全体で可視化・連携された情報を活用し、分析に基づく例外リスクを検知し、次の一手を打つ俊敏性を得ることを目指し、大きな混乱が生じた場合のサプライチェーンプロセスやフローへの影響把握、迅速な対応を実現する。

全体を鑑みるサプライチェーンコントロールタワーの役割を備え、過去に何が起きていたのか、今何が起きているのか、将来何が起こり得るのか予測をし、行動につなげることを可能とする。

例えば、サプライチェーンデータに加え、気候や災害データも加味し、シナリオに基づいた計画から、潜在的なリスクや影響範囲をシミュレーションし、受発注や生産リスクを把握して在庫調整や生産調整につなげるディスラプションマネージメントも可能だ。

弊社顧客の欧米の自動車OEM企業では、OEMとTier1サプライヤ間の受発注はもとより、Tier2、Tier3、物流キャリアである運送業者が参加するコラボレーションプラットフォームを弊社にて構築した。弊社サービスを利用して、全プレーヤーとのデータ授受をデジタル化し、標準的な「内示、確定注文、注文変更、納期回答、出荷通知、出荷ラベル、入荷、請求データ」に加えて、下記のデータについても、弊社サービス上の単一リポジトリで管理している。

■Tier2、Tier3サプライヤ:生産計画、在庫情報
 ■運送業者:運行計画、輸送ステータス・ETA、現在位置情報

これらの集約された情報と、人/組織、プロセス、サービスといったサプライチェーンマネジメント(SCM)システムに関わる構成要素全体をIndustry4.0に沿った仕様にアップデートした。これにより、自社内の情報だけではなく、社外エコシステムであるプレーヤーからのデータを単一プラットフォームに集約することで、リスクに対する包括的な表示を提供するダッシュボードが可能となった。

この取組みにより、日々の例外は弊社サービスでプロアクティブに検知できるので、より密にプレーヤーと連携し、迅速な交渉、欠品回避や在庫削減、生産業務改善につながった。また、ダッシュボードには、サプライヤと運送業者のKPI評価を含んだサプライヤ管理プロセスが組み込まれているため、リスクをよく理解し、ビジネス交渉に活かすことで、迅速に次の一手が打て、多大なコストを回避することができるようになった。

昨今、新疆ウイグル自治区での強制労働の問題から、日本でも注目されている製造・生産における川上から川下までのトラッキングについても可能だ。弊社顧客の欧米企業では、既にこのステップにいる企業も多く、サプライチェーンを含めた人権尊重・コンプライアンスに対する取組みであるエシカルサプライチェーンや、カーボンニュートラルを達成するといったグリーンサプライチェーンに対する取組みを実施している。いずれも、サプライヤの信用度やKPI評価を実施する継続的なサプライヤ管理、サプライチェーン及び製品ライフサイクル全体の可視化が不可欠であり、弊社サービスにより支援している。

【アダプティブサプライチェーン】

最後のステップは、アダプティブサプライチェーンである。構築された自社を取りまくサプライチェーンエコシステム全体に対して、KPIを設定・評価し、必要に応じて構築されたサプライチェーンネットワークは修正され・再構築されるべきだ。具体的には代替調達や生産拠点替えなどが該当する。

これを支援するため、弊社では、サプライチェーンリスクとサプライヤまたは自身のコンプライアンスを監視および管理するサプライチェーンリスク管理ソリューションを2022年内にリリース予定である。ダッシュボードを介してサプライヤの企業統計、財務、およびESG指標にアクセスできるだけでなく、有害メディアでの該当や、PEP、制裁などにあるサプライヤのリアルタイムモニタリングも提供する。これにより、リスク管理者は適切なリスク軽減プロセスを実行でき、代替サプライヤをセルフサービスでオンボーディングも可能となる予定だ。

こういった、いかなる状況においても、取引先の変更や追加が迅速に適用できるように、柔軟性かつ拡張性が必要となる。そして、欧米の先進企業のように、SCMを経営戦略に含める、もしくは経営戦略に準じて、ビジネスのROI向上に寄与できる仕組みを目指すことも重要と考える。

「令和2年度ものづくり基盤技術の振興施策」からの抜粋となるが、日本では、SCMを経営戦略とすべきという課題意識を持つ企業の割合は低い。各国企業の取組みや海外の同僚に話を聞くと、先進的な企業は経営戦略とSCM戦略で同期が取れている。サプライチェーン高度化は、社内外エコシステム全体最適化を業務横断で実施する必要があるため、上層部の戦略的な舵取りも重要である。

最後に

弊社が提供するサプライチェーン高度化を支えるサービスは、アウトソーシングサービスのため、各国企業からのリクエストや規制・コンプライアンスに追随して、四半期ごとにサービスの拡充をしており、継続的な投資による改善にも取り組んでいる。今後も、こうした新サービスや欧米顧客の先進的な事例、より具体的な取組み内容を引き続き紹介していくことで、サプライチェーンの強靭化を通じた日本企業の発展に貢献していきたいと考えている。

(文=オープンテキスト株式会社 ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 深井麻紀子)

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