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サンゴスタートアップのイノカ、水槽内での産卵に成功

イノカ(東京都港区)は自然環境を再現した水槽内で育てたサンゴの産卵に成功した。自然界とは異なる時期に産卵させた事例は珍しいという。

今回成功したエダコモンサンゴは、日本では6月にしか産卵しない。実験では自然界とは4カ月、季節をずらすことで2月に産卵させた。同社は2020年に産卵の手前にあたる抱卵に成功。その時は産卵に至らなかった。高倉葉太最高経営責任者(CEO)は「前回は光を強く当てすぎて、産卵しなかった。その部分を改善した」と話す。

本研究が進めば、産卵時期を自在にコントロールできる可能性があり、サンゴの卵や幼生の研究に活用する。また水温が高い海でも生育できるサンゴの育種研究につなげ、海に戻すことを目指す。

イノカは人工で自然環境を再現する「環境移送技術」を手がけるスタートアップ。水槽内に取り付けたカメラやセンサーで取得したデータを使い、サンゴを飼育する。20年にモーリシャス島沖で発生した重油流出事故の対策として、商船三井が主導する「自然環境保護・回復プロジェクト」にも参加している。

サンゴが地球に占める面積は、わずか0.2%程度だが、海洋生物の約25%に及ぶ約9万3000種が生息しているという。環境破壊によって2040年には90%が死滅するとの予想がある。21年に発足した「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が環境破壊リスクを開示する仕組みづくりを始めるなど、「生物多様性」を重視する風潮が欧州を中心に高まっている。

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