ESG・SDGsで大注目。企業緑地の認定制度を知っていますか?
都市緑化機構(東京都千代田区)が環境や社会的に価値があると評価して認定した民間の緑地が99カ所となった。ESG(環境・社会・企業統治)投資が潮流となったことで、緑地を社会に発信して評価を得たい企業が増えており、100カ所の大台が迫ってきた。持続可能な開発目標(SDGs)の活動としても敷地の緑化は取り組みやすく、中小企業にもメリットがありそうだ。
都市緑化機構の認定制度は「社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES、シージェス)」。企業などの緑地を対象とした「そだてる緑」、開発に伴って整備した緑地の「つくる緑」、都市緑地の「都市のオアシス」の3種の認定がある。14日、ロームの本社工場(京都市右京区)と都市再生機構(UR)の団地(千葉県松戸市)を「そだてる緑」、三菱地所の複合施設(東京都千代田区)を「つくる緑」に加え、現在の認定拠点が全99カ所となった。
同機構がシージェスを始めたのは2005年。同機構の菊池佐智子副主任研究員は「企業が緑地を増やすインセンティブ(動機付け)」と目的の一つを紹介する。法律や条例に従って一定面積の植栽を持つ企業が多い。第三者評価があれば企業にさらなる緑地拡大を促すことができると考え、シージェスを創設した。
企業も面積以外に“質”も評価してもらえると、緑地を保全する意欲もわく。藤田昌志副主任研究員も「緑の価値が“見える化”されると、社外にも発信できる」とシージェスが企業に受け入れられた要因を説明する。
実際の認定は、書類と現地審査の結果を専門家が審議して決める。面積などの基本情報のほか、住民からの愛着、地域の生物多様性への貢献、雨水を吸収する防災機能、担当者の熱意なども評価基準だ。
認定は5段階。3年ごとの更新審査時に取り組みが向上していると昇格できる。「一度の取得で終わる認定制度と違う。何年も先を見て、計画的に緑を育てて上位を目指してほしい」(菊池副主任)と思いを語る。現地審査時にも企業担当者に「5カ年計画を策定してほしい」などと助言する。企業は緑地の優れた点以外に改善点も分かり、管理目標を立てやすい。
サンデンホールディングスの場合、前橋市内の工場の緑地を対象に認定を取得した08年以降も手入れを続け、本格的な森に育てた。学校や市民の環境学習も積極的に受け入れ、20年には5段階のさらに上位の「緑の殿堂」入りが認められた。
ESGやSDGsの潮流があり、シージェスへの問い合わせが増えているという。菊池副主任は人手不足が心配される中小企業にも効果があると助言する。「緑地を公開することで地域との接点が深まり、就職先として選ばれる」ためだ。
他にも緑地の認証制度としてABINC(運営=いきもの共生事業推進協議会)やJHEP(同=日本生態系協会)もある。製造業であれば、敷地に緑地を持つ企業が多い。普段、通勤する職場での緑地整備なら従業員も参加しやすく、SDGs活動としても継続できそうだ。