ブロックチェーンで履歴管理。総合商社が「食品のSDGs」に挑む
総合商社が食品の販売や取引を通じた国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向け動き始めた。消費者にSDGsを意識してもらうための仕掛け作りや、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用した履歴管理確保(トレーサビリティー)など多角的な取り組みが広がる。フードロス削減をはじめ問題提起が盛んに行われているが、目標達成には消費者の意識の変化も必要だ。(森下晃行)
三菱商事が出資するインパーフェクト(東京都千代田区)はコーヒーやチョコレートの販売を通じSDGs達成に取り組む。地域社会の発展や環境負荷の低減といったサステナビリティー(持続可能性)を重視し事業を行っているシンガポールの農産物商社オラム・インターナショナルなどの商品を、日本で販売している。
また、商品を購入した客はインパーフェクトとオラムが共同で企画した支援プロジェクトに投票できる。「地域における女性の社会進出」「ミツバチの生育環境の整備」などの三つから選ぶことができ、投票数が最も多かったプロジェクトにインパーフェクトが店舗の年間売り上げの一部を拠出する。
インパーフェクトの浦野正義社長は「消費者が当事者意識を持って関わることができる」と意義を強調。「BツーC(対消費者)を中心に持続可能なライフスタイルを提案したい」(浦野社長)とオラム以外の企業とも協業し、SDGs関連の情報を発信している。
伊藤忠商事はコーヒーの流通経路追跡サービスを提供するスイス・ファーマーコネクト(FC)に出資した。同社のプラットフォームは、消費者が商品のパッケージに記された2次元コードをスマートフォンで読み込むと、豆の栽培環境や保管された倉庫、輸送経路などが表示される。貧困について考えてもらうきっかけを提供するとともに、消費者が農家にオンラインで寄付することも可能だ。
情報はブロックチェーンを使って記録されるため「信頼性が高い」(伊藤忠)という。現在は海外でのみサービスを提供しているが、伊藤忠は同様の取り組みを日本でもできないか検討している。
三井物産は、子会社の三井物産流通ホールディングス(MRH)がNTTコミュニケーションズと共同で物流におけるデジタル変革(DX)のシステムを開発中だ。商品にRFIDなどのICタグを付け、メーカーから倉庫、小売り店までの流通経路を把握する。現在は実証中で、将来的には「食品ロスの削減や需要予測などに活用したい」(MRH)考えだ。
欧米ではサステナビリティーへの配慮が消費者の選択基準として浸透しているが、日本では「まだ意識が低い」(浦野インパーフェクト社長)のが現状だ。消費者がいかにSDGsを身近なものとして生活様式に取り入れられるかが課題だ。
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