ペーパーレス化で主力事業が縮小する凸版印刷、事業構造転換への財務戦略

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凸版印刷が資本効率の向上を急ぐ。ペーパーレス化で主力の紙印刷事業の縮小が進み事業構造の転換が求められている中、政策保有株縮減や収益性の高い事業強化などにより株主資本利益率(ROE)を2022年3月期予想の2・6%から26年3月期には5%まで引き上げる計画だ。

黒部隆取締役常務執行役員兼財務本部長は「装置産業ゆえ利益は安定しているが、ROEは高く出にくい。最低限5%を達成しないと投資家が認めてくれない」と認識する。同社のROEは元々2―3%台で推移していたが、有価証券売却益の影響などにより20年3月期と21年3月期は6―7%台まで高めた。

同社の資本効率向上の足かせの一つが政策保有株だ。印刷業界は受注産業で、顧客との関係強化を目的に同社は長年にわたり顧客の株式保有を増やしてきた。ただ近年、顧客企業の株価が上昇し、資産が膨張。18年3月期末から21年3月期末にかけて102銘柄2400億円を売却したが、21年3月末時点でも政策保有株は約5000億円で純資産の3割強を占めている。具体的な規模は非公表だが、政策保有株の縮減はまだ進める方針だ。

20年3月期と21年3月期は一時的にROEを高めたものの、肝心なのは本業で収益性を向上させることであり、そのためにも資産の見直しで得られた資金の使途が重要となる。17年3月期―21年3月期の5年間の成長投資1250億円(計画値)に対し、21年3月期―23年3月期の3年間で既存設備の再構築やM&A(合併・買収)などへの投資を2800億円と大幅に引き上げる。

全体の営業利益に占めるデジタル変革(DX)事業の割合を、21年3月時点で2割弱とみられるところ26年3月期に3割まで高める目標を掲げる。包装材といった海外生活系事業、新事業創出の拡大にも力を注ぐなど、積極投資をテコに事業構造の転換を急ぐ。

凸版はROE向上の近道である自社株買いも否定はしない。約12年ぶりとなる自社株買いを20年12月―21年9月に実施し、取得額は200億円。「規模感はリクルート株売却からすると少額」(花屋武SMBC日興証券アナリスト)との指摘はあるものの、資本効率の向上に向けた一歩。「株主還元もバランス良く」(黒部常務)行いながら重要案件に積極投資していく。

日刊工業新聞2021年12月27日

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