半導体装置の受注残2.8倍で過去最高、増える需要に追いつかぬ生産

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ウエハーを切断する装置、ダイサー(ディスコ提供)

半導体製造装置の受注残が積み上がっている。アドバンテスト、SCREENホールディングス(HD)の半導体製造装置(SPE)事業、ディスコの7―9月期の受注残の合計は4―6月期比32・3%増、前年同期比2・8倍の5478億円で過去最高となった。世界的な半導体不足を背景に高水準な受注が継続する一方、装置メーカーの生産能力や部材調達力が追いついていない。各社は受注残の解消に向けて対応を急ぐ。(張谷京子)

「当社がテスター(半導体試験装置)を作るには、自動車の10倍程度に相当する50万点の部品が必要。急峻(きゅうしゅん)な受注増加への追従に苦心している」。アドバンテストの吉田芳明社長はこう漏らす。同社は、7―9月期の受注高が7月予想比1050億円増の2038億円で大幅に上振れた。

部材不足が原因で同社の装置の納期が長期化する中、顧客が装置を先行確保しようとする動きが広がっていることが理由の一つ。取引先には「役員総出で製造装置を作るための半導体がいかに重要かを説いて(優先供給を)お願いしている」(吉田社長)という。

SCREENHDは「10―12月期の受注も4―6月期、7―9月期並みの水準を想定。22年1―3月期のスロットも押さえが入っている」(近藤洋一専務取締役最高財務責任者〈CFO〉)状況だ。7―9月期のSPE事業は受注高、受注残がともに過去最高を更新。22年3月期末に向け、生産拠点「Sキューブ3」(滋賀県彦根市)の生産能力を7―9月期末比10%高める。

ディスコは人手不足がボトルネックとなり受注残が増加。関家一馬社長は「引き合い残の消化に1年半ほどかかる」と話す。社員寮の完備や通勤圏外の人が就職しやすい制度を整えるほか、22年度の新卒も生産支援に回ってもらうことなどで対応を進める。

露光装置最大手の蘭ASMLは受注残が196億ユーロ(約2兆5700億円)に上る。7―9月期の受注高61億7900万ユーロと比べると約3倍に膨らんでいる。25年までに生産台数をEUV露光装置で20年比2倍以上に、DUV(深紫外線)露光装置で同1・5倍以上にそれぞれ増やす。

各社の受注高は第5世代通信(5G)の普及やIoT(モノのインターネット)の進展、コロナ禍の巣ごもり消費の拡大を背景に20年以降右肩上がりだ。

需要の反動減はあるのか―。楽天証券経済研究所の今中能夫チーフアナリストは「四半期ベースで調整が入ることはあっても元の水準に戻るとは考えにくい」と指摘。5Gやデータセンター向けなどの先端半導体に加え、自動車や家電などで使われる汎用半導体でも「40―50ナノメートルから20ナノメートル台に移行する動きがある」(今中アナリスト)。旺盛な設備投資が続くとみる。

SCREENHDの近藤CFOは「23年3月期は少なくとも22年3月期を上回るくらいの状況になる。調整が入るとすれば24年3月期だが、過去のような山谷の深い調整にはならないだろう」と予想。部材不足や人手不足などの課題を解決し、半導体メーカーからの旺盛な引き合いを好業績に結び続けられるか。踏ん張りどころだ。


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日刊工業新聞2021年11月9日

キーワード
半導体 ディスコ

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