リン原料の生産能力を5倍にする日本化学、韓国・中国メーカーの需要増に応える
日本化学工業は、欧米や中国を中心に世界的に拡大傾向にある量子ドット(QD)ディスプレーの製造用リン原料の生産能力を現状比5倍に高める。同社の福島第二工場(福島県三春町)内のリン原料の生産ラインに特殊な設備を増設する。具体的な生産量は非公表。2021年度内に着工し、22年度下期の稼働を目指す。投資額は約8億円。
同社はQD用のリン原料で世界シェア7―8割を占めており、韓国・サムスングループや中国メーカーなどの需要増に応える。
QDは10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の半導体粒子で、カドミウム系とインジウム系材料が用いられる。日本化学工業が提供するQD向けのリン原料はホスフィン誘導体(リンを基にした誘導体)の一種で、関連製品は5種類以上。溶媒用途では両材料で使用される。同製品群による同社の世界シェアは7―8割(同社調べ)。
福島第二工場では、30年以上前からホスフィン誘導体の生産を開始。14年からはQD製造向けにも提供を始めている。QDディスプレー市場の急拡大が見込まれる中、関連製品の生産ラインの構造を精査。中間の設備を追加することで、現状の5倍に達する大幅な生産能力向上が可能と判断した。
QDは高輝度・高精細の色彩を実現できるため「QDシート」としてディスプレー用に需要が拡大。さらに韓国・サムスンディスプレーは、インジウム系材料を用いた「QDインク」によるディスプレーの量産化を進めている。
QDインクはQDシートよりもQD濃度が2倍以上高いため、日本化学工業は関連製品のさらなる需要急増を見込む。
日刊工業新聞2021年11月5日