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「2050年までに環境負荷ゼロ」。ソニーが10年以上も前に宣言できた理由と今後

ソニーグループは2010年、50年までに事業活動による環境負荷をゼロにする長期ビジョン「ロード・ツー・ゼロ」を公表した。当時、50年という目標は珍しかったが、取引先や若者から評価されるようになった。50年に向けた長期視点の経営を社会に理解してもらうために「丁寧な説明が大事」と語るソニーグループの神戸司郎執行役専務に、環境対策に取り組む理由などを聞いた。

環境対応不可欠 人材獲得にも影響

―ソニーが気候変動対策に熱心な理由は。

「ソニーのパーパス(存在意義)は世界を感動で満たすこと。地球が持続的でなければ感動を提供できず、我々の事業は成り立たない。吉田(憲一郎)も社長就任後『地球の中のソニー』というタイトルのブログを社員に発信した。多発する自然災害は社員にも、お客さまにも影響が出る。グローバル企業の責任として地球の安定的な発展に貢献したい」

―なぜ10年時点で「50年ゼロ」を宣言できたのでしょうか。

「欧米で環境問題への意識が高まっていたから、ソニーも責任を果たそうと考えた。社内目標とするのではなく、社外に宣言したことに意味があると思う。そして、言うだけではなく5年ごとの目標を定めて実行してきた」

―当時と受け止め方も変わりました。

「機運が明らかに高まっている。ある取引先からは再生エネルギー100%で製造してほしいと要請がきている。消費者もエコフレンドリーな商品を求めている。竹やサトウキビ、再生紙を混合した紙素材を開発し、6月発売のワイヤレスイヤホンのパッケージに採用した。前向きな評価があり、ビジネスにつながる」

「若い人は自分が使う商品をつくった企業の環境対応に関心を持つ。また、志望動機で環境貢献をあげる学生も多く、優秀な人材の獲得や定着にも影響する。さまざまな観点から環境対応が不可欠であり、取り組まないことがリスクとなった」

ソニーグループの神戸司郎執行役専務

―長期ビジョンは投資家にも受け入れられましたか。

「環境負荷を下げる新技術は、1日や2日では開発できない。結果が出るまで時間がかかるとしても、50年に向けて進む理由を丁寧に説明する。また、社会からも長期視点の経営を許容してもらうことが大事だろう。企業は説明責任を果たし、ステークホルダーが妥当なのか考え、対話を繰り返すことが健全ではないか」

―今の取り組みは。

「商品の消費電力削減や工場の省エネ化が基本だ。また、人工知能(AI)を搭載したイメージセンサーの商品化を進めている。送受信のデータ量を減らし、電力消費も抑えられる。デジタル化に伴う電力需要の増大が社会課題であり、解決策になってほしい」

記者の目/自社がブレないことが大事

ソニーはテレビなど商品の販売動向で評価される企業だった。長期視点の経営を社会に理解してもらうために、まずは自社がブレないことが大事だ。足元の業績で企業自身が右往左往していると、投資家や取引先から信頼されなくなる。いま、多くの企業が脱炭素を宣言している。1社1社が丁寧に説明責任を果たす必要がある。(編集委員・松木喬)

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日刊工業新聞2021年8月27日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
あるところで「地球の中のソニー」の一部を読みました。「経済活動を営むことができるのも、健全な地球環境があればこそ」「持続可能性に重きを置いて企業活動を考えることが必然」などと綴られています。気象災害で浸水被害を受けた人、農作物が不作で収入が途絶えた人は映画や音楽、プレステを楽しむ余裕はありません。健全な環境がなければ、ソニーのビジネスが成立しないのだと感じました。

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