世界中のロボット技術が競い合う一大イベント「WRS」開幕へ。見所はここだ!

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WRSの表彰式(18年のプレ大会)

ロボットの社会普及や研究開発を促進するイベント「ワールド・ロボット・サミット(WRS)2020」が9日に始まる。米中独など世界中からロボット技術が集う。製品組み立てやコンビニエンスストア、災害対応などをテーマに技を競うことで技術開発を促す。同時にコンビニや工場で働くロボット、災害救助に当たるロボット技術を紹介して、次の社会を形作る。技術と社会がともに進化する場になる。(小寺貴之)

4テーマで競技会 多彩なアイデア、現場に落とし込む

経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する。日程は愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開催する「愛知大会」は9―12日。福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)の「福島大会」は10月8―10日。

人工知能(AI)やロボットなどの最先端技術は、技術開発と社会実装が不可分だ。ロボットが活躍する場面を広く示すことでユーザーを募り、ユーザーと一緒に現場へ技術を当てはめて運用を練り上げる。技術開発と運用体制の構築を並行して進めることが企業の競争力になる。この流れを災害対応などの社会の仕組みに落とし込むことが喫緊の課題だ。

こうした背景を受けて、WRSでは「ものづくり」「サービス」「インフラ・災害対応」「ジュニア」の4部門で競技会を開く。ロボット技術が浸透した製造業と、現在導入が進むインフラ保守や災害対応、人間とロボットがともに働くコンビニなど、ロボット社会の現在と未来を見せる狙いだ。

技術を成熟させ精度を突き詰めた先にあるロボットの姿と、まだコンセプト段階だが既存の枠組みにとらわれないロボットの姿が共存する。この技術の多彩さが異分野のロボット導入を触発する。

例えば製品組み立てではマニピュレーションというロボットの手や腕を使う技術が中心だ。作業台の上で正確に部品をつかみ組み合わせる。対して災害対応では迅速に調査地点にたどり着くモビリティーが重要だ。作業精度と走破性、ともに長い研究の歴史がある。

そして現在は両技術を組み合わせた、移動した先で精密な作業をするロボットが求められている。例えばコンビニでは深刻な人手不足を受け、ロボットが商品棚の間を巡って商品を並べるニーズが高まっている。

安全に素早く移動できれば、工場で固定されている多関節ロボは2体分、3体分の働きが可能になるかもしれない。シンプルな工夫で作業精度が上がれば、移動先で精密作業ができるようになる。

ものづくり “最前線”で火花

キッティング作業を行うロボットを心配そうに見つめるチームメンバー(18年のプレ大会)

「ものづくり」部門では工業製品の組み立てを競う。技術者集団のロボットシステムインテグレーターや大学研究者が先端技術で火花を散らす。テーマはベルト駆動ユニットの組み立てだ。

実はベルトなどの軟らかい部品は、ロボットの天敵だ。軟らかい部品は形が定まらないため認識が難しい。拾い上げても変形してしまい、組み付けが難しい。FA(工場の自動化)では軟らかい部品は極力減らす。WRSでは硬い部品の精密な組み立てと軟らかい部品の素早いハンドリングを求める。

また2019年のトライアル大会から無人搬送車(AGV)との連携が課題に加わった。AGVで搬入搬出を行うため、組み立てロボは部品の位置座標を計測し直す必要がある。この再計測が製造現場では課題だ。計測の度に時間がかかり生産性が落ちる。FAはコンマ数秒を突き詰めるほど要求水準が高い。WRSでシンプルな解法が提案されると幅広い効果がある。

サービス 舞台は家庭・コンビニ

フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ。ロボットの動きを見つめる参加者(18年のプレ大会)

「サービス」部門では家庭とコンビニの二つの競技場を用意した。家庭用ロボットは散らかった日用品を片付けたり、頼まれた物を探して持ってきたりする。コンビニでは商品を陳列し、接客、トイレ掃除を担う。ロボットとの生活を感じさせる競技となった。

実は日常の雑然と散らかった部屋はロボットにとっては難題だ。ロボットのカメラでどこに何が落ちているか認識し、どこに片付けるべきか記録する。例えばコップをつかもうとして隣のコップが倒れたらコップを探して計測し直す必要がある。生活空間はロボットが作業しやすいように整えられてはいない。

それでもAI技術で認識性能が向上し、コップをコップと識別できるようになった。技術者は作業の作り込みに集中できる。複数の物を同時に認識し、位置関係を押さえて作業できればロボットの家庭進出が見えてくる。

対してコンビニはどこに何が並んでいるか明確だ。WRSではサンドイッチや弁当などを並べて廃棄品は回収する。ロボットの作業に適した棚も開発できる。トライアル大会では引き出し式が提案され、人もロボットも作業しやすくなった。

そして明確なニーズがある。例えばトイレ掃除では、働いている外国人らによっては文化の違いなどから掃除の水準が異なることもあるかもしれない。WRSを通して清潔さを定量化できれば、清掃を自動化するなど世界展開が見えてくる。

インフラ・災害対応 平時・緊急時、“二刀流”の活躍

壁にあるサビやクラックを遠隔操作ロボットで確認(18年のプレ大会)

福島大会で唯一開かれる「インフラ・災害対応」部門では、化学プラントやトンネルでの点検保守と災害対応を競技とした。プラントでは平時からロボットで維持管理し、緊急に対応。普段から稼働しているロボットで初動調査できれば安全に状況を把握できる。平時と緊急時の両課題にかなうロボットが必要だ。

プラント災害予防競技では林立する配管やダクトにアームを伸ばして健全性を確認する。アームの先のカメラでメーターを読み、正常値に収まっているか確かめる。ポンプの異常音を聞き分ける検査もする。振動センサーをポンプに押し当てたり、離れたところからマイクで異音を拾うなど、スコアを伸ばすには効率よく点検する技術が求められる。そして点検中に警報が鳴る。すぐにガス漏れや異常発熱がないか点検し、要救助者はいないか探すことになる。

トンネル事故災害対応競技では、事故車両の中から要救助者を助け出し、消火作業に当たる。平時の点検は送風設備の点検を想定する。大規模な災害を再現するため、シミュレーションで実施する。

こうした作業に必要な機能は多岐にわたる。競技課題の成否だけで評価しきれない難しさがある。そこで移動能力やセンシング能力、耐久性など、各種性能を個々に評価するために災害対応標準性能評価(STM)競技を設けた。プラントとトンネルが総合力の評価、STMが個々の性能評価を受け持つ。

STMでは入り組んだがれきをかき分けて進む「ネゴシエート」やプラントの足場を再現した「キャットウォーク」などで移動性能を評価する。点検の検査能力は壁一面にマーカーを貼り、読み取る速度を競う。総合力と個々の技能を磨くことで想定外に強いロボットを開発する。

ジュニア 未来を見つめる、自由な発想

子どもたちが自作したロボットとプログラムを駆使してタスクのクリアを目指す(18年のプレ大会)

「ジュニア」部門は世界から中高生などがリモート参加する。学校で働くヒューマノイドと家で働くロボットがテーマだ。スクールロボット競技ではソフトバンクの「ペッパー」を標準機として活用する。すべてのチームがペッパーを使うため、生徒たちが作成したプログラムをアップロードすれば公平に競える点が特徴だ。コロナ禍で子どもたちは集まれなくても、お互いのアイデアを発表して交流できる。

トライアル大会ではペッパーが人を認識して話しかけたり、誘導したりするといった課題が出された。

ホームロボット競技ではミニサイズとリアルサイズの2種目が用意された。盲導犬のように障害物を避けるよう人を案内する。耳の不自由な人にはドアベルなどの大切な音を知らせて助ける。

見どころはオープンデモだ。世界各国、さまざまな事情を抱える。コロナ禍を経て子どもたちが社会を見る目も変わった。どんな課題をロボットで解決するか、子どもたちの自由な発想に大人がうならされるだろう。

日刊工業新聞2021年9月2日

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