【ロボット技術の競技会「WRS」】製造業の組み立て競う“一見地味な”競技を行う理由

民間・大学の連携効果期待

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キッティング作業を行うロボットを心配そうに見つめるチームメンバー(18年のプレ大会)

経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催するイベント「ワールド・ロボット・サミット(WRS)2020」が9日に始まる。社会課題や産業競争力に資する課題を競技化し、技術開発を促すことでロボットの社会実装を加速させる。ものづくり部門では製造業の組み立てをテーマに技を競う。迅速でスリムな一品ものづくりという究極の工場の形を競技にした。同部門競技委員長の横小路泰義神戸大学教授に狙いを聞いた。

―ベルト駆動ユニットの組み立てを競技にしました。一見すると地味なテーマです。

「参加チームに民間企業が多く、WRSで掲げた将来の生産システムの姿が産業界に受け入れられた結果だと捉えている。競技では迅速に無駄なくシステムを立ち上げ、教示レス、治具レスで一品ものでも組み立てるシステムを目指している。我々大学人は時にピンボケな未来を掲げてしまう。だが民間のロボットシステムインテクグレーター(SIer)が参加し、本気で取り組んでくれている」

―2018年のプレ大会から変更点は。

「豊田自動織機の協力で無人搬送車(AGV)を導入した。スタートすると搬入から組み立て、搬出まで無人で完結させる必要がある。またサプライズ課題では、事前にサプライズの候補部品の図面を示すようにした。実際のビジネスでは図面を見てから注文を受け、まったく未知な部品は扱わない。そしてノーマル部品の組み立てだけでは得点が伸びないように配点した。サプライズ部品に挑戦しないと優勝は難しい」

―競技会を通して民間と大学のチームが競う意義は。

「SIerの堅実で精緻な技術と大学人の常識にとらわれない発想の両方が見られる点だ。プレ大会では米ケンブリッジ大学が小さ過ぎてつまめない部品をグリースでハンドリングした。こうした発想はなかなか出てこない。そして民間と大学の連携を促す効果が期待できる。大学研究者は、製造現場は研究され尽くしていて研究課題は残ってないと思っていた。WRSで挑戦すると難しい問題がごろごろ出てきた」

―民間への効果は。

「産業界には、未来の姿に挑戦する機会になる。協働ロボは過渡期の姿であり、究極の姿は無人だ。中でも組み立ては自動化が難しい工程。ここで技術を確立すれば世界をリードできるだろう。また、ハンドに民間のノウハウがたまっている。大学研究者が加わり、ノウハウを理論化できると波及効果は大きい」(小寺貴之)

取材はオンラインで実施。写真は2018年8月に撮影したものを使用

日刊工業新聞2021年9月2日

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