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冷凍食品・飲料・家電…コロナ禍が夏商戦に生んだ新たな需要

冷凍食品・飲料・家電…コロナ禍が夏商戦に生んだ新たな需要

猛暑の日本列島はお盆を過ぎ、夏後半へ。夏商戦もラストスパート

猛暑再来。一部地域では気温が連日30度Cを超え、スーパー、コンビニで飲料やアイスなどの売り上げが伸びているほか、家庭用エアコンの出荷台数は高水準で推移する。お盆以降も残暑の影響で売り上げの積み上げが期待できそうだ。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、夏商戦に新たな需要も生まれている。コロナ禍で迎える2度目の夏。消費動向を追った。(編集委員・大友裕登、同・板崎英士、高屋優理、安川結野、高島里沙)

コンビニ 味わい多彩、冷凍スイーツ好評

猛暑で冷凍食品が伸長―。ローソンの調査によると、7月26日―8月1日の1週間で冷凍食品全体の売り上げは7月12―18日の週に比べて約1割増となった。同時期は猛暑に加え東京五輪の開催期間中でもあり、調理時間を短縮したいニーズを背景に販売が伸びた。注目なのは上位に入った商品。冷凍フルーツと冷凍デザートが売り上げトップ5を独占した。

猛暑で販売が伸びたローソンの冷凍フルーツ「アップルマンゴー」

1位は冷凍フルーツの「アップルマンゴー」で、売り上げが同2割増となった。冷凍フルーツは日持ちし、解凍してそのまま食べるほか、ヨーグルトへのトッピングなど多用途での利用も可能。夏場はアイスの代わりに冷凍のまま食べる食べ方もあるという。冷凍デザートも長期間保存でき、好きな時に手軽に食べられるニーズが高まっており、コロナ禍でも好調に推移している。

長期間の豪雨をはさんで、猛暑が再到来している。一方で、全国的な新型コロナ感染の急拡大に伴い外出自粛の意識は一段と高まるだろう。一度の買い物でまとめ買いする機会が増えており、日持ちして、食べたい時に容易に準備できる冷凍食品の需要は、今後も堅調に推移するとみられる。

飲料 無糖炭酸水活況、高まる健康志向が拍車

飲料市場は新型コロナ感染拡大などで厳しい環境にあるが、ここ数年、活況を呈しているのが無糖炭酸水だ。無糖炭酸水は11年にアサヒ飲料が「ウィルキンソン タンサン」を発売し、「割り材」から「直飲み」に需要が拡大した。これに糖類を避けて低カロリーを好む健康志向の高まりが拍車をかけ、年率約20%の成長を継続。夏商戦でも各社の売り上げをけん引している。

無糖炭酸水市場のリード役は、「ウィルキンソン」を展開するアサヒ飲料と、「天然水スパークリング」を展開するサントリー食品インターナショナル、日本コカ・コーラの3社だ。

暑い夏は冷たい清涼飲料水が人気。中でも無糖炭酸水に注目が集まる

21年は日本コカ・コーラが5月に新ブランド「ICY SPARK」を投入したほか、サントリーは天然水スパークリングから「THE STRONG」を6月に発売。ウィルキンソンは1―6月の販売数量が前年同期比6%増となったほか、天然水スパークリングも同6%増と引き続き伸長。猛暑の押し上げ効果も相まって、年間でも過去最高となる見通しだ。

コロナ禍の影響が顕著になった20年の清涼飲料市場は、前年比7%減の3兆7978億円で着地した。ただ、無糖炭酸水はキリンビバレッジが「キリンレモン 無糖」など新商品を投入したこともあり、前年比19%増となった。20年の無糖炭酸水の市場規模は10年比で約8倍となり、右肩上がりで拡大。この流れは今後も続く見込みで、飲料市場の定番商品になりつつある。

白物家電 「清潔ニーズ」でエアコン競争激化

家電業界は好調が続く。日本電機工業会(JEMA)によると、6月の白物家電の国内出荷額は前年同月比3・7%減の2964億円で着地。前年割れとなったものの、6月単月としては過去3番目の高さとなった。

けん引役はエアコンだ。特別定額給付金の後押しや猛暑が重なった20年と比較すると、21年6月は出荷金額・台数とも前年同月比で減少したが、台数は単月で過去3番目の高水準を維持した。

7月以降も前年の反動を受けるが、夏商戦は堅調に推移しそうだ。電機メーカーは21年通年でも需要は底堅いと予想する。また、国内での新型コロナ再拡大の影響を受けて、消費者ニーズには変化が見られるという。三菱電機の担当者は「20年6月と比較すると販売台数は鈍化傾向にあるが、昨年に続き『清潔ニーズ』が顕在化する」と説明。清潔機能を搭載した機種が好調という。

自宅で過ごす時間が増えたことから、省エネ機種の需要も高まる。東芝ライフスタイルの担当者は「省エネ性能が高く、空気清浄機能や換気機能、除菌・脱臭機能など、快適性を備えた高級機の販売比率が上がっている」と話す。

昨年の巣ごもり需要の反動はあったが、新型コロナ感染拡大の長期化でエアコンに新たなニーズが生まれた。消費者の志向に応える機種の投入で各社の競争が激化しそうだ。

電力需給、逼迫回避…供給まだ安心できず

猛暑やコロナ禍の巣ごもり、東京五輪など電力消費の増加で需給バランスが心配されたが、最大需要地の関東では今のところ大きな問題は起きていない。

東京電力パワーグリッドの1日のうち最も電気が使われた時間帯の使用率を見ると、7月15日から8月18日までの35日間に電力予備率3%を切る「非常に厳しい」日はなかった。95%以上の「厳しい」が3日、93%以上95%未満の「やや厳しい」が5日、残る27日は93%未満で「安定的」だった。

20年度冬期に寒波と液化天然ガスの供給減から需給逼迫(ひっぱく)が発生。脱炭素化の方針で複数の低効率火力発電所が停止し供給力が下がっていることもあり、国は5月に夏の需給見通しを出した。

猛暑になった場合、北海道などを除き予備率は適正とされる8%を大きく下回る3.7―3.8%になると警告。梶山弘志経済産業相の呼びかけもあり、国民にそれなりに節電意識は浸透した。ただ8月上旬に日本卸電力取引所のスポット市場や時間前市場で年度最高値を更新するなど、電力供給側はまだ安心していない。

私はこう見る

広がる「プチぜいたく」 大和総研シニアエコノミスト・神田慶司氏

新型コロナウイルスの感染拡大で外食や旅行、娯楽などの出費は振るわないとみる。だが、(夏休み期間の)新幹線の予約状況は昨年よりもかなり増加しているなど、足元で人流が増えているようだ。旅行などの移動に伴うサービス消費は昨年より活発なのではないか。

緊急事態宣言が続いているため、宣言が発出されても人の行動は抑制されなくなっている。感染防止の面ではネガティブな要素だが消費には悪影響が出ておらず、宣言下でも消費は大幅に落ち込んでいない。

巣ごもり需要でスーパーに行く頻度が増えたことに加えて、単価を上げるようなプチぜいたくの動きが広がっている。宅配やテークアウトも好調で、外で買ってそれを家で楽しむ消費も拡大している。(談)

日刊工業新聞2021年8月20日

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