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飲料メーカーはEC販売が好調、カギはラベルやデザイン?

飲料メーカーはEC販売が好調、カギはラベルやデザイン?

キリンビバレッジの「やわらか天然水」

飲料メーカーが電子商取引(EC)の売り上げを伸ばしている。アサヒ飲料とキリンビバレッジはともに、1―6月のECでの販売金額が前年同期比30%増となった。新型コロナウイルス禍で外出を控える中、食料品を中心とした生活必需品の購入がECにシフトしていることが背景にある。各社、ECのオリジナル商品や複数の商品を組み合わせた提案などを強化し、拡販を目指す。(高屋優理)

外出自粛で利用増える

アサヒ飲料はEC専用商品として、ラベルレス商品を展開しており、1―6月は同2・2倍の84万ケースと大きく伸ばした。店頭ではラベルがないと、どの商品か見分けが付かず、買いにくいが、ECだとあらかじめブランドを決めて購入するため、ラベルがなくても問題がない。アサヒ飲料の鈴木学広域流通部EC・MDグループリーダーは「さらにゴミに出す時に、ラベルを剥がす手間が省けるメリットがある」と話す。

アサヒ飲料の「ウィルキンソン」(左がラベルあり、右がラベルレス)

アサヒは2018年にミネラルウオーター「おいしい水」ブランドでラベルレス商品を販売。19年に「十六茶」や「六条麦茶」などの茶系飲料を追加した。2月には無糖炭酸水「ウィルキンソン」もECサイト「Amazon」限定で販売を開始。乳酸菌飲料「守る働く乳酸菌」もECでラベルレス商品を展開するなど商品を拡充している。

ECでは包装の工夫も特徴の一つだ。キリンビバレッジは段ボールの処理を簡便化できる「パパッと片付くダンボール」を開発。18年8月からミネラルウオーター「アルカリイオンの水」に採用している。広がらずたためて3枚まで重ねられるため、持ちやすく、ゴミの処理の際に便利な仕様となっている。

ECでは箱買いが中心となるため、1ケースの容量を増やした大型専用商品を販売している。小売店で販売する2リットル入りのペットボトルは1ケースが6本入りだが、ECでは9本入りを展開。キリンは18年8月にミネラルウオーター「アルカリイオンの水」の9本入りを発売。想定販売数量を20%程度上回るなど好調だったため、その後、緑茶飲料「生茶」や紅茶飲料「午後の紅茶 おいしい無糖」など、商品を拡充した。

キリンビバレッジの「キリンアルカリイオンの水」2リットルペットボトル9本入り

包材工夫・アソートで販促

ECならではの特徴として各社が強化するのが、複数の商品をセットにするアソート商品の展開だ。アサヒはエナジードリンク「モンスター」や乳酸菌飲料「カルピス」、「ウィルキンソン」で、複数のテイストをセットで販売する「飲み比べセット」を展開。6月下旬からは、炭酸飲料「三ツ矢」の飲み比べセットなどを追加し、ラインアップを拡充した。

アサヒの鈴木グループリーダーはEC専用のアソート商品について、「組み合わせの妙によって、新しい価値を生み出していきたい」と話す。アサヒでは今後、自社商品の組み合わせだけでなく、他社の商品との組み合わせなども販売する計画で、現在、各社と交渉しているという。「ECは購入者が売り場を回遊するので、抱き合わせの商品を効率的に提案できる」(鈴木グループリーダー)と、アソート商品を強化する方針だ。

一方、キリンはEC専用商品として、デザイン性を追求した商品を展開している。ミネラルウオーター「やわらか天然水」は、容量310ミリリットルと小型サイズで、持ち運びやすくした。外出時に持ち運ぶことを想定し、ボトルデザインを6種類展開。消費者はECサイトを回遊して購入することが多いため、ビジュアル的に選ばれることを意識している。

コロナ禍で生活様式や消費動向が大きく変化する中、飲料メーカーにとって、ECの重要性が増している。各社はECならではの需要を捉え、専用商品の開発につなげており、今後さらにこうした商品が増えそうだ。

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