次世代自動車のカギ握る電池、調達・開発の合従連衡を読み解く
電動車の基幹部品である電池。パナソニックや中国の寧徳時代新能源科技(CATL)、韓国のLG化学などが主要サプライヤーだ。自動車メーカーは、調達安定化や共同開発などを狙い、電池各社との関係強化を急ぐ。
トヨタ、共同出資会社で増産
トヨタ自動車はパナソニックとの関係を強化。1996年にプライムアースEVエナジー(PEVE、静岡県湖西市)を立ち上げて、20年にはパナソニックの角形リチウムイオン電池を集約する形でプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES、東京都中央区)を設立した。
PPESは21年から生産能力を順次引き上げる。兵庫県姫路市の拠点で、電気自動車(EV)用を年約8万台分、中国・大連市の拠点でハイブリッド車(HV)用を年約40万台分増産する予定。22年から徳島県の拠点で開始する生産計画と合わせると年間の全体の増産分は電動車約98万台分になる見通し。
トヨタは電池調達のための陣容を拡大している。車載電池世界大手の中国CATLやGSユアサなどとも取り引きする。また豊田自動織機から新型ニッケル電池の調達も始めた。
一方、パナソニックは米テスラとの関係も深く、円筒形電池を供給している。
韓国勢、米企業と合弁
韓国電池メーカーは近年、米自動車メーカーとの距離を縮めている。LG化学は米ゼネラル・モーターズ(GM)と合弁会社を設立した。GMが開発したEV向け電池「アルティウム」を生産する。GMと提携するホンダは、アルティウムを用いたEVを24年に発売予定だ。SKイノベーションは、米フォードと車載電池の合弁会社を設立し、米国で電池工場を建設する。
欧州の自動車メーカーとの関係性も強い。主要サプライヤーとしてサムスンSDIは独BMWと、LG化学はスウェーデンのボルボ・カーと、SKイノベーションは独ダイムラーと取引している。
CATLに存在感
中国では車載電池世界最大手のCATLの存在感が圧倒的だ。自動車メーカー各社は、主に中国で現地生産するEVに搭載する電池を確保しようとCATLとの関係を強化した。ホンダは20年7月にCATLの株式の約1%を取得。トヨタは19年に電池の共同開発や供給などでCATLと提携を結んだ。日産も同社から調達する。
海外メーカーもCATLと長期供給契約を結んだ。独BMWは19年、20―31年にCATLから73億ユーロ(約9465億円)分の電池セルを調達すると発表した。従来の発注は40億ユーロ分だった。スウェーデンのボルボ・カーも19年に数千億円規模の長期契約を結んだ。
ダイムラーは商用車部門が19年にCATLと提携を締結し、21年5月には提携関係を強化した。24年量産予定のEVトラックで同社の電池を搭載するほか、次世代電池セル・パックを共同開発する。
3社連合、エンビジョンと新工場
日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合は、EV用電池を中国系のエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)を軸に調達する。日産は英国と日本、ルノーはフランスにそれぞれエンビジョンAESCと連携してEV用電池の新工場を建設。日本では24年から量産を開始する計画だ。
一方、ルノーは仏新興のヴェルコールに20%以上出資し、同社からもEV用電池の調達を計画。日産は中国の欣旺達電動汽車電池(Sunwoda)とHV用電池の共同開発の検討も進める。
電動車、35年の新車販売8.4倍 富士経済まとめ
富士経済(東京都中央区)は、35年にEVなど電動乗用車の世界の新車販売台数が20年比8・4倍に拡大すると予測する。車載電池では需要が数十倍規模に膨らむとの指摘もあり、自動車各社にとっては電池の安定確保が重要になる。一方、EVは販売価格の高さが課題。コストアップの最大要因は電池でEV価格の約3分の1を占めるとされる。車各社にとっては電池メーカーとの共同開発や他社との共用などで電池の量産効果を高め、コストをいかに下げられるかがカギを握る。
また脱炭素に向け電池を含めた製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を抑える仕組みも求められる。サプライチェーン(供給網)を巻き込んだ総合力が競争力を左右しそうだ。
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